2016年11月下旬に、【特願A】 (次世代ドローンの基本特許)が国際公開されます。
2ヶ月後に、【特願G】 (宅配ドローン専用のヘリポート)が続きます。
一連の特許出願に関する技術解説特集です。
航空機や船舶では、積荷の量や位置が厳しく管理されています。
小さな旅客機では乗客の体重も計測され、左右前後のバランスが保たれています。
貨物船ではバラスト水の増減により空荷の状態でも適切な吃水にコントロールされています。
過去にも積荷のバランスを甘く考たことにより、事故に至った例は多数あります。
例えば2014年の韓国フェリー転覆事故。
このフェリーは日常的に、過積載をカバーするためにバラスト水を減らしていました。
結果として重心が上がり復元力が保てなかった事が直接的な事故原因でした。
貨物機なども、荷物のバランスが適切で無かったことが起因し事故に至るのが定番の墜落原因です。
この様に荷物を運ぶ際には、バランス取りが大変重要です。
それでは、「宅配ドローンは、どの様な位置に積載するのが正しいのか?」
その答えを知っているドローンの開発者は少ないというのが実情です。
良く見かける搭載位置が、「本来ならカメラを搭載する位置に荷物を搭載」というパターンです。
この搭載方法は簡単に実現可能ですが、大きな問題を抱えたままの危険なフライトです。
・積載の有無により重心位置が大きく変動
・前進姿勢で特定のモーターに負荷集中
宅配という特性上、積載物の有無でドローンの重心は大きく変化します。
仮に搭載時前提で、バランス(ゲイン含む)を取られていたとします。
この様な機体は、空荷になるとハンチング墜落を招きやすい機体特性になってしまいます。
これを避ける為に空荷で機体セッティングを行うと、突風の影響を受けやすい特性になります。
いつも同じ荷物を運ぶ機体なら、パラメーターは、積載時と空荷の2種類で対応可能です。
しかし・・・普通の宅配なら、荷物の種類は最大積載量の範囲で上下するはずです。
荷物自身の重心も重要です。
平面的に真ん中の位置に重心が無ければ、機体側へ影響が出てしまいます。
この荷物の重心位置まで宅配会社が管理することは困難な事でしょう。
また、搭載時には極端な下重心となります。
この様な機体は、前進姿勢を長時間保つとモーター負荷の極端な偏りが発生します。
具体的には、前進時に後ろ側のモーターに負荷が集中することになります。
信頼性の点からこの様な特性は好ましくないのは言うまでもありません。
さて、どうしても汎用機で宅配しなければならないとします。
個人的には、然るべき時代が来るまでは自粛すべきと思うのですが・・・
様々な思惑から、待つことが出来ないようです。
ならば、汎用機を使わなければならない今の段階では、以下の様な方法で対策するしかありません。
・荷物は可能な限り上に搭載(機体重心近く)
・移動中は定期的に前後を入れ替えて負荷を分散
・ゲインは搭載時と空荷で個別に設定
これで、問題の半分は解決出来ます。
「上空で機体が横方向に回転しながら進行方向に進む」
イメージ的に近いのがフリスピーです。
これならわかりやすく負荷分散をしているアピールが可能ですね。
実は、コレ特許性があります。
ですが・・・もっと優れた方法があることから、本命の解決手法ではありません。
ベストとは呼べませんが、以下の解決方法を示します。
浮力の発生点と荷物の重心を一致させる。
この機体は社内では、「理想重心機」と呼ばれています。
これなら、汎用機ベースの機体が抱えている問題の全てを解決出来ます。(新たな問題が出てきますが、それは後ほど)
この仕組みは、アマゾンの2世代目のテスト機体に採用されています。
推進用モーターに目が奪われがちですが、浮力重心に荷物を搭載していることの方が重要です。
この機体は、理想重心の達成と同時に荷物の傾きまで考えた機体です。
モーター負荷の方よりも理論的には発生しないことから、モーターのダウングレードが可能になり結果として燃費も向上します。
それでは、宅配ドローンの本命かと言うと・・・
これも違います。
このタイプの機体には以下の欠点があります。
・機体サイズが大きい(ピザが運べない)
・砂塵に弱い
・特許性が無い ※この形状としては
機体の中央部に荷物を搭載する必要があります。
結果としてモーター間隔を離すため、機体は大型化します。
同時に前面投射面積も増えることから最高速と燃費の悪化も無視できません。
また、荷物が汎用機よりも高い位置にあることから、着陸時にはモーターと地上の距離が近くなります。
一般家庭の庭に着陸するなら、汎用機よりも粉じんを巻き上げます。
この粉じんは機体の信頼性を落とす方向に働きます。
最後が特許性。
この機体では市場を独占することが出来ません。
なお、アマゾンでは第1世代は、ラダーフレームの汎用ドローン。
それを用いたテストにより、重心位置変化の問題などに気がつけたのでしょう。
第2世代として、重心変化をハードウェアにて吸収するという機体を出してきた事になります。
第3世代機体の発表が待ち遠しいところです。
お待たせしました。
これが0 [Zero]の回答です。
浮力発生点から下に伸ばした棒の先に荷物を搭載。
搭載物は有無による重心変化をキャンセルする。
これなら、単純な理想重心機が抱える欠点も全て解消出来ます。
さらに、以下の様な新たなメリットも生み出します。
・地上からモーターを離すことが可能
・荷物の中の重心変化も均等化可能
・特許性がある
基本的な考え方は、アマゾン第2世代と同じです。
それを、一世代進化させたと呼べると思います。
ただし、この機体も宅配ドローンの本命機ではありません。
このまま実務に投入すると、何点かの問題が発生します。
※問題点は、現段階では非公開とさせてください。
その問題を解決した宅配ドローンの本命機体が、【特許G】 【特願:2016-211740】になります。
なお、特願Aの出願は、アマゾン第2世代の発表の半年前。
ドローンのフレーム世代では、0 [Zero]が数世代進んでいます。
142) 【特願D】宅配ドローンヘリポート
141) 宅配ドローン着陸姿勢と特願A
140) 宅配ドローン理想重心機と特願A
139) ドローンのデザインとは?
138) バッテリー初期不良の原因特定
137) DJI純正バッテリーの自己放電確認テスト
136) 5機目のDJI PHANTOM2
135) DJIは信用出来るのか?
134) 2016年のDJIクオリティの確認
133) 宅配ドローン実証機制作 その3 特許と許可申請
132) 宅配ドローン実証機制作 その2
131) 宅配ドローン実証機制作 その1
130) 航空法改正
129) 【特願A】実フライトテストNo1
128) 「ドローンから落下させる」機構制作とテスト
127) ドローンの飛行時間について
126) ゲインとは?
125) 首相官邸屋上のドローン落下事故に関して
124) リポバッテリーの検査方法
123) GoProのNDフィルタに関して
122) ホワイトハウス無人機墜落に関する推測
121) 特許出願機の実体化
120) 墜落原因の報告義務について
119) 危険な業者の判断方法
118) 注文者責任のとらえ方の変化に関して
117) マルチコプターが旅客機を墜落させる
116) マルチコプター全面禁止というシナリオ
115) マルチコプター墜落原因の解析について
114) GPSハッキング
113) 管理責任者の表示
112) フライト総重量の明示
111) 湘南国際マラソン墜落事故を考える
110) 雨とリチウムポリマーバッテリー
109) DJI lightbridge テスト開始
108) DJI Phantomd純正プロペラの評価
107) T-MOTOR Antigravity MN2214の評価 その2
106) SUNNYSKY Xシリーズの評価 その2
105) 大型機とFPVの解禁
104) 「螺旋下ろし」で安全な機体回収
103) 固定ピッチのメリットとデメリット おすすめ
102) 3Dプリンタ打ち出し部品を信じるな!
101) 3Dプリンタとマルチコプター
100) 技術解説100ページの区切
99) マルチコプターとPL法
98) スチール撮影用マルチコプター入門
97) リポバッテリー内部検査の理由
96) T-MOTOR Antigravity MN2214の評価
95) SUNNYSKY Xシリーズの評価
94) フルスクラッチマルチコプターのススメ
93) SONY SEL1018は、マルチコプター空撮に使えるか?
92) Amazon Prime Air
91) α7とα7R
90) 動画撮影前提のマルチコプターフライトテクニック
89) 航空法第二条
88) リポバッテリー充電ステーション設計中
87) マルチコプタージャマーについて
86) 空撮屋必修の書籍 :「一般気象学」 おすすめ
85) 電波障害の再検証
84) 空撮会社のノートパソコン
83) マルチコプター空撮機材車
82) 選別落ちリチウムポリマーバッテリーの例
81) プロペラバランスを極める
80) 機材車増車
79) 受注制限に関して
78) ブラシレスジンバル【1.0kgクラス】 業務投入開始
77) ブラシレスジンバル・最初の2週間
76) 1.0kgクラスのジンバル交換
75) 「GoPro HERO3 + ブラシレスジンバル」初フライト
74) ブラシレスジンバル組み付け中
73) パソコンの高性能化により、機体を軽量化?
72) モーターを使い切るノウハウの公開 おすすめ
71) 黎明期から成長期に入ったマルチコプター空撮
70) 夏場の駐車車内の温度上昇対策
69) 「社員パイロット」の責任範囲
68) 「幽かな彼女」ワーク解説
67) マンション眺望撮影専用機体の開発開始
66) コンパクトデジカメの可能性
65) 「フライト重量」は重要な技術スペック
64) 1.0kgクラス・最初の1ヶ月
63) AR.Drone 【屋内ハル】の流用
62) 1.0kgクラス4モーター フレーム再設計
61) 1.0kgクラス4モーター開発経過
60) 屋内限定業務用クアッドコプター開発開始
59) ハンディーカムCX430V導入
58) DJI Wookong-MのGPSアンテナ
57) DJIの品質は大丈夫なのか?
56) フタバ14SGは空撮送信機の定番と成り得るか?
55) サイバーショットDSC-WX200発表
54) リチウムポリマーバッテリーの短絡テスト おすすめ
53) 「科捜研の女」2時間スペシャル撮影例
52) 軽量マルチコプターにベストなカメラは?
51) GTOスペシャルのワーク解説
50) リチウムポリマーバッテリー考察
49) 変電所付近での電波障害
48) ノーファインダー撮影が基本
47) DJI Wookong-Mの暴走原因の特定完了
46) 墜落テスト[2.0kgクラス 6モーター 2012年12月編]
45) DJI Wookong-Mの最新ファームに関して
44) AR.Drone 2.0はブロの撮影に使えるか?
43) プロペラ接触危険率 おすすめ
42) 2.0kgクラス高機動タイプ [Ver2] 開発中
41) 2012年夏のマルチコプター墜落の解説 【このページにて原因の特定説明】
40) 「受注見合わせ」と、「フライト制限」に関して
39) 重量級テスト機体の処分
38) マルチコプターに関する特許出願の内容
37) オクトコプター初フライト
36) 「人物接写空撮」とは?
35) 「2.0kgクラス 6モーター」第一期大規模改修完了
34) 「引きのカット」のカメラ角度について
33) 軽量マルチコプターだから出来ること
32) 0 [Zero]の機体が軽く精度が高い理由
31) マグネシウム合金が理想的なマルチコプターフレーム材
30) 6モーターは危険?安全?
29) 8モーターが安全な理由
28) 4モーターが危険な理由
27) DSLR搭載機開発の一時凍結
26) 初のマルチコプター空撮業務の解説
25) マルチコプターの事故と注文者責任 おすすめ
24) 降雪時のマルチコプター空撮サンプルとは?
23) エクストリーム空撮
22) プロペラバランス
21) リチウムポリマーバッテリー
20) マルチコプターの防振対策
19) JR XG8 本採用
18) モーターテスト用ベンチ制作
17) GoPro HE HERO2 専用ジンバルの試作例
16) 機体設計の方向性
15) ラピド工房
14) DJI Wookong-Mは最新ファームによりトラブル解決
13) αゲルとジンバル
12) 空撮ムービー撮影にフルサイズ一眼は必要なのか?
11) バルーン空撮屋の都合
10) DJI WooKong MとJR・DMSS2.4GHzとの相性?
9) DJI WooKong Mの初期不良確定
8) 犯人はコントローラー?受信機?
7) DJI WooKong Mのトリムズレ
6) 上空フライトテスト
5) 離陸から撮影までの所要時間
4) 実務を想定した弱風条件の動画撮影
3) 1号機にカメラ搭載
2) 最初の一週間
1) マルチコプターの導入