メインモーター(FSD2830)のインチサイズベアリングの国内在庫が底をついてしまいました。
メーカー生産待ちの数ヶ月を乗り切る観点から、複数のメーカーの小さなブラシレスモーターをテスト購入しています。
その中で、注目に値するモーターが出てきたことから技術解説にて取り上げます。
←本日届いた、SUNNYSKY X2212 12個。
当たりハズレのあるモーターでは、この程度の量をテスト購入しないと評価が出来ません。
0 [Zero]の事務所の中では、テストによる不採用となったモーターが山積みとなるのが日常です。
このページのモーターもテスト後に非採用となっているモーターです。
やはり、12個をテスト購入しています。
なお、インチサイズのベアリングは、問屋から大量に購入した事もあるのですが・・・
長期在庫などを引き当てることも多く、あまり良い思い出がありません。
同様の理由から、海外通販を利用したベアリング購入も控えます。(国内品としても)
故に・・・
過去に、インチサイズのベアリングを容量アップでミリサイズになどという研究をしていました。
2012年当時は、重量2kg以下のマルチコプターに用いるベストなモーターは、FSD2830で決まりでした。
不動と思われた、このモーターが引退する可能性が出てきました。
左側が、FSD FC2830。
もう、2年以上メインのモーターになっています。
1.0kgクラス 4モーターの様に、極端に振動を嫌う機体にも、このモーターを搭載しています。
このモーターと、樹脂プロペラにて、過去の0 [Zero]の仕事は全て撮影されています。
安価で、入手性も良いのですが・・・
使いこなすには、技術の問われるモーターです。
欠点は、派手な色と、入手性の悪いベアリング。
このクラスでは、3.00mmのシャフトが普通ですが、3.175mm(インチサイズ)を採用しています。
この僅かな差が振動に有利になるとも言えるのですが・・・入手性が悪く、高価なベアリングにいつも悩まされています。
このベアリングが、国内の通販サイト大手の在庫がなくなってしまいました。
販売店経由でメーカーに問い合わせたところ、国内在庫は全て無いとの事。
次回の生産も未定との事でした。
社内の在庫は、ある程度はあるのですが・・・先が見えないというのは、仕事の道具としては怖いところ。
そこで、モーターの集中テストを実施することになりました。
現在、国内・国外からモーターの取り寄せ中。
注目に値するモーターがある場合は、技術解説にて紹介します。
外装色は、黒。
一般的なアルマイトの黒色です。
マットブラックなら完璧なのですが・・・そこまでは望めません。
なお、メーカーロゴは印刷。
普通なら、シールの部分ですが・・・ここが印刷なのは狙ってです。
理由は、シールを剥がされる事によるバランス変化を嫌ってのことから。
撮影のプロの機材としては、黒がベストです。
LEDで、機体がピカピカも、0 [Zero]的にはあり得ないところです。
購入直後の状態でアウターをベンチで回しました。
その評価結果がこちらです。
左側はAクラス以上。
右側はBクラス以下という分け方です。
この段階のFSDなら、12個中で2~3個がAクラスになるのが普通。
SUNNYSKY X2212は・・・全てがAクラス評価となってしまいました。
過去に、このクラスのモーターを山のようにテストした経験から述べると・・・
この様な優秀な結果は、完全に想定外です。
←参考として、FSDの例。
同じく、左側がAクラス以上という評価です。
右側のBクラス以下が、如何に多いかがわかると思います。
これを、この後の調整でAクラスに引き上げるのがテクニックと言えるのですが・・・
私の、今までの努力は何だったのでしょうか?
青い熱可塑性樹脂がウエイトになっています。
今回のモーターは、アウターのバランスが全て取られていました。
過去に、高価なブラシレスモーターでアウターのバランスが取られているのは見たことがあります。
しかし・・・これは、1個¥2,000円という安価なモーターです。
スゴイ時代になりました。
ここまで踏み込んだメーカーが、他の肝心な部分で手抜きを多発することは考えにくいところ。
迷ったら、このモーターを購入すれば良いでしょう。
バンサーは、上側と下側に同量となる様な配慮で付けられています。
多すぎる場合は、②の様に削り取ってバランスを再調整しています。
12個のアウターを観察すると、少ない物で2ヶ所。
多い物では、6~8ヶ所にウエイトが付いています。
このバランス取りの精度は、安価な市販品として十分過ぎる物。
今回の12個の、購入直後の非改造の状態で、評価は全てAクラス。
つまり、シビアな案件で無ければ業務に投入可能なレベルという評価を下しています。
ただし・・・
業務用と考えると、もう一歩というところ。
ウエイトの削りカスなどが内部に残留しています。
当然ですが、一定の重量は持っている。
このゴミは磁性していないことから、容易に取れてしまいます。
つまり・・・
ごみが動けばバランスは崩れる。(僅かなので、一般用途は問題無し)
ここは、内部清掃後に、再度のバランス取りが正しいところです。
もう、隠しても意味が無いのでノウハウを公開します。
0 [Zero]のFSD2830モーターは、アウターに穴を開けてバランスが取られています。
ここをキッチリ出さないと業態応用のモーターを取ることが出来ません。
SUNNYSKY X2212の、購入状態ではバランス取りは完璧ではありません。
完璧ではありませんが、必要十分なところまでは攻められています。
インナーにも言える事なのですが、モーターの一つ一つが振動を確認しながら組まれています。
繰り返しとなりますが、安価なモーターで、ここまでの配慮がされているのは素晴らしい事です。
ここまでは、SUNNYSKY X2212を最大限に褒めてきました。
振動と言う観点から、文句の無い出来です。
ここからは、業務で用いるという前提で、重箱の隅をつつきます。
←まずは、加工ミス。
穴加工のバリ取りが忘れられています。
この位置なら問題無いのですが、配線が掛かる部分の場合は致命的なミスになります。
また、この穴から除くと、エマルジョン系と思われる接着剤もはみ出している個体がありました。
振動に関する検査態勢は完璧と言えるところですが、製造品質に関しては、もの凄い高いというレベルではありません。
業務に用いるなら、内部の徹底的な検査は必須です。
用いてるシリコンケーブルは16AWG。
このクラスのモーターなら18AWGでも必要十分なところです。
「太い=高価」なケーブルを使っているなら良いことでは無いか? と思うのは早計です。
太いと言うことは、同時に重いを意味します。
想定電流を遙かに上回るケーブルは、無駄な重量とも言えます。
ここは切り詰めるか、20AWGに交換するかの二択。
1個のモーターで数グラムという単位の軽量化ですが、無視出来ない重量です。
なお、この評価は、0 [Zero]のマルチコプターに用いるという前提の評価基準ですので注意が必要です。
ケーブルの交換などは、ご自分の機体の必要電流を加味しながら自己責任で決めて下さい。
それでも・・・18AWGで十分かと思いますが・・・
ここで悲しいお知らせです。
SUNNYSKY X2212のシャフトは、3.175mmです。
つまり、インチサイズです。
しかも・・・ベアリングはFSD2830と、完璧に一緒です。
今回のモーターの検討は、ベアリングの入手性が悪いことからスタートしています。
その根本の部分が・・・崩壊してしまいました。
ベアリングが同じということから、FSD2830とSUNNYSKY X2212を比較すると・・・
とてもよく似ています。
試しに、2830のアウターをX2212に装着すると・・・
非改造で回転。
シャフト長が少し違う事から、そこの手直しをすると・・・
完全に、一致してしまいました。
FSD2830は、2212とイコール。
FSDの呼称が不自然ですね。
滅多に居ないかと思いますが・・・
FSD2830を使いこなしている方には、SUNNYSKY X2212が非常に使いやすいモーターになります。
手持ちのベアリングは、そのまま使える。
優秀なX2212のアウターを信頼性の高い、FSD2830のコイルで使える。
FSD2830で不満を感じていた部分(製造精度・設計)に、尽く手が入っています。
このページでは、目に付きやすいアウターを中心に解説していますが・・・ここ以外も設計者のセンスを感じます。
←上のベアリング取付面に注目して下さい。
左のFSDの収まり。
ベアリング交換の際には、都合の良い形状です。
右のSUNNYSKYでは、コイルよりもベアリングは内部に入り込むことになります。
「ベアリング交換の際に治具が必要」「上と下のベアリング間が狭くなる=振動には不利」これは、マイナスの要素。
そして、「プロペラ取付面が下げられる=振動には有利」がメリット。
正確には、ヘリアング取付面を下げた余裕で、「プロペラ取付面の下げ」と、「冷却強化」の両面に振り分けています。
確かに・・・FSDと比較すると、同じ仕事量なら発熱量が低いことは確認出来ました。
そして、磁石や純正ベアリングもFSDと比較すると良好です。
ベンチ上でも、僅かですが性能(電費)が良いことも確認出来ました。
大量生産品という観点と、販売上の事情まで考慮すると、指摘出来る設計ミスはひとつもありませんでした。
歩留まり(全てのモーターの振動が少ない)が良いのは、アウターのバランスを取る際に、結果としてコイル=ベアリングのはめあいもチェックされることになるから。
つまり・・・出来の悪いコイルは、アウターの振動チェック(もしくは、出荷前の振動検査)で、はじき出されてしまいます。
振動検査工程があるから、SUNNYSKY X2212は振動しない。
これが、結論です。
今回のテストで、SUNNYSKYに興味が出たことから公式サイトで商品をチェックすると・・・
メインは、飛行機系というラインナップでした。
儲かりそうな、重量級(6S)マルチコプターに使えそうなモーターはありませんでした。
飛行機系のモーターの中から、3Sマルチコプターに使うそうなモーターを探すと、X2212のみとなってしまったという感じです。
恐らく、グライダー系の高級モーターの設計・製造の経験が高い方が社内に居るのでしょう。
加筆:6Sクラスのモーターもありました。
今のところは・・・
・歩留まりが非常に良い(この点を、最大限に評価します)
・重量は僅かに増加(主原因は16AWG)
・発熱特性は良好
・電費は改善(FSD2830比5%改善)
・見た目は非常に良い
・加工精度はFSDよりも良好
・FSD2830と互換性が高い(アウター・コイル共に)
・入手性は、少し悪い
・ベアリングの入手性は悪い(インチ=FSD2830と同じサイズ)
明らかにメリットが多い。
特に、歩留まりが良いことが最大のメリット。
見た目が地味なのも好印象。
これなら、乗り換えない理由がありません。
最終的な結論は、コレットの精度確認やバランス調整後のフライトテスト。
そして、夏場の高温なども試してから最終結論となるのですが・・・
今のところ、X2212は、0 [Zero]のメインモーターとなる可能性が高いとコメントを残します。
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