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ドローン空撮[技術解説] - プロペラ接触危険率

プロペラ接触危険率
軽量ヘキサコプター

はじめに

マルチコプター(モーター数=4個以上)は従来型のラジコンヘリコプターよりも安全とされています。
しかし、具体的に安全な理由が述べられるページはありません。
(2012年10月:国内の空撮会社のホームページにて 0 [Zero]調べ)

そこでマルチコプター空撮を検討されている方を対象に、事故の規模をイメージできる指針の一つとして「プロペラ接触危険率」を示させて頂きます。

今後、0 [Zero]にて開発される業務機体にはプロペラ接触危険率を明示させて頂きます。
リスクが高い機体を用いた業務では、事前の書類提出をお願いする場合があります。
何とぞ、ご理解の程をよろしくお願いします。

プロペラ接触危険率計算式

プロペラ接触危険率は、以下の式により計算されます。

総重量 ÷ モーター数 × プロペラ補正値

軽く、モーターが多いほど危険率は下がります。
危険率100%が重大な事故を想定する分岐点として設定されています。
その数値を元に、SS~Dクラスまでのクラス分けを行います。

0 [Zero]が用いてる機体 クラス 計算式 備考
1.0kgクラス4モーター Sクラス 1,000g ÷ 4モーター × 0.1 = 25.0% 屋内撮影の0 [Zero]メイン機
2.0kgクラス6モーター Aクラス 2,000g ÷ 6モーター × 0.266 = 88.8% 動画撮影の0 [Zero]メイン機
2.0kgクラス8モーター Aクラス 2,000g ÷ 8モーター × 0.266 = 66.5% スチール撮影の0 [Zero]メイン機

以下参考機体
AR.Drone(ガード付き) SSクラス 420g ÷ 4モーター × 0.05 = 5.25% ガード分は重いがプロペラ接触危険率は低下
AR.Drone(ガード無し) SSクラス 380g ÷ 4モーター × 0.1 = 9.50% 総重量は軽いがプロペラが剥き出しの為に悪化
4.0kgクラス6モーター Bクラス 4,000g ÷ 6モーター × 0.266 = 177.3% 0 [Zero]で研究用として購入した機体
DJI S800(参考値) Cクラス 6,000g ÷ 6モーター × 0.300 = 300% NEX搭載を前提とした定番機体
従来型小型ラジコンヘリコプター Dクラス 2,500g ÷ 1モーター × 0.500 = 1,250% モーターを用いた小型機として想定
従来型中型ラジコンヘリコプター Dクラス 6,000g ÷ 1モーター × 0.500 = 3,000% 現在もスチール撮影などで用いられる事が多いタイプ

プロペラ接触危険率

SSクラス プロペラ接触危険率=10%以下
もっとも安全と呼べるクラス。
ただし、眼球接触などの事故リスクは残ります。
AR.Droneに代表される、トイレベルの安全性を有する機体が該当します。

Sクラス プロペラ接触危険率=10~50%
現実的な映像制作が可能な、もっとも安全なクラス。
衣服の上からの接触なら、ケガをする事はありません。
GoProなどを用いた、超軽量機体が該当します。
1.0kgクラス4モーター

Aクラス プロペラ接触危険率=50~100%
0 [Zero]の考えるスタンダード機。
人と接触すると、軽度なケガが想定できるクラス。
衣服の上からの接触は接触部分に一時的に跡が出来ます。
肌の露出部分などに接触すると、出血を伴うケガが想定されます。
2.0kgクラス6モーター

Bクラス プロペラ接触危険率=100~150%
機体の大きさとプロペラの風切り音で、怖いと感じ始めるサイズ。
シャツ程度の衣服は切り裂かれる事もあります。
人と接触すると、重大な事故が想定できます。
これ以上のクラスは人物に近づく事は不可能と考えます。

Cクラス プロペラ接触危険率=150~1000%
人と接触すると、重大な事故が発生します。
人物に接近するフライトは激禁。
機体が見える範囲は危険と考える必要があります。(機体の半径50mは立入禁止がベスト)
プロ用マルチコプターの多くがこのクラスに該当します。

Dクラス プロペラ接触危険率=1000%以上
人命に関わる事故が想定出来ます。
草刈り機レベルの殺傷能力を有します。
従来型ラジコンヘリコプターが該当します。

マルチコプターは何故安全なのか?

プロペラは浮力を生む為に回転しています。
そのプロペラが受け持つ加重が大きいほど、プロペラの危険度は上がることになります。
マルチコプターでは複数のプロペラに受け持ち加重を分散させることが可能です。
これにより、同じフライト重量なら従来型ラジコンヘリコプターよりも安全になります。
より軽い機体を、より多くのプロペラで分散させることがプロペラ接触事故のダメージを下げる事につながります。
「マルチコプターは何故安全なのか?」の問いには
「受け持ち加重を分散させるから安全」とお答えできます。
受け持ち加重を分散できることが従来型ラジコンヘリコプターとの最大の違いです。

しかし、マルチコプターによる加重分散にも限界があります。
高度なジンバルが搭載されるプロ用の機体は重量が重くなります。
これらの機体では飛行中のプロペラに接触すれば、問題となるケガが即時に発生します。
(確実に、出血を伴います)
今回の算定式の設定では、「ホバリング中のプロペラを、手のひらで止められる範囲」という基準で算定しています。
ここに、プロペラ接触危険率100%が設定されています。
人と接触した際の事故を想定するとしいう観点から、プロペラの固定方法や材質も算定式には含まれます。
強度のあるカーボンプロペラをモーターに直結。
この方法は画質・安定性・燃費にはプラスとなりますが接触時のリスクを増やす方向に働きます。
業務によっては安定性を犠牲にしてもプロペラ接触危険率に考慮するという配慮も必要です。

◆同業者の方へ
「勝手に、自分に都合の良いことを言うな!」と言う方もいると思います。
試しに、用いている機体を以下の算定式に当てはめてプロペラ接触危険率を算出してみてください。
そして、ホバリング中のプロペラを手で止められるかを考えて見て下さい。
どうでしょうか?
この計算式は実際のリスクを的確に示すことが出来ると思いませんか?

プロペラ接触危険率計算式

総重量 ÷ モーター数 × プロペラ補正値※1

総重量 : カメラ・バッテリーを含む、実際にフライトする際の総重量。
モーター数 : モーターの出力などは考慮する必要がありません。(プロペラ補正値内の特定プロペラ設定値にて補正します)
プロペラ補正値 : 取り付け方法・材質なども個別に設定します。

※1:プロペラ補正値の計算方法

プロペラの取り付け方法 × 特定プロペラ設定値 ÷ プロペラの羽の数

◆プロペラの取り付け方法
直結=1 モーターにネジ止めで取り付ける方法。(一般的な方法)
プロペラセーバー=0.75 ゴムなどにより、墜落時の衝撃をプロペラから逃がす方法。
従来型ラジコンヘリコプター=1
接触時に力を逃がすことができるプロペラセーバーはここで補正を行います。
数値に関しては今後のテストにより補正される可能性があります。

◆特定プロペラ設定値
従来型ラジコンヘリコプター(カーボンブレード)=1
従来型ラジコンヘリコプター(木製ブレード)=0.8
カーボンプロペラ10インチ以上=0.8
カーボンプロペラ10インチ未満=0.6
APC電動用・10インチ以上=0.6
APC電動用・10インチ未満=0.5
GWS・3枚10インチ=0.5
GWS・3枚10インチ未満=0.4
DJIファントム純正 9.4インチ=0.4
カーボンプロペラ8インチ(AR.Droneカード付き)=0.4
グラス入り8インチ(AR.Droneカード付き)=0.2
AR.Drone(カード無し)=0.2
AR.Drone(カード付き)=0.1
プロペラ1枚毎に危険率を評価します。
柔らかく、接触時に破断するプロペラは安全と評価します。
同サイズでも、カーボン化により強度が増しているプロペラは接触危険率の観点からは不利となります。
ここにないプロペラにて評価する場合は上記数値を参考に設定値を選択してください。
プロペラガードの効果はここで補正を行います。

◆プロペラの羽の数
2枚=2 もっとも一般的なプロペラ
3枚=3 0 [Zero]が用いることが多いタイプ
羽の数が多いほど、加重は分散されます。
2012年現在は存在しませんが6枚プロペラなどがプロペラ接触危険率などの観点からは有利です。
現実的な選択肢の中では3枚プロペラが2枚プロペラよりも安全とする根拠となります。

コラム:本ページに関して

このページはマルチコプターによる空撮を発注される方に具体的な潜在リスクを説明する為に制作されています。
用いられる用語などは技術的に正しい事よりも「伝わること」を重視して選定されています。
ページの内容は株式会社0独自の見解であり一般認識とかけ離れている場合があります。
また、技術・研究の進歩により表現方法並びに見解は変わり続けることとなります。

注意:プロペラ接触危険率に関して
「飛行中にプロペラと接触」を想定しています。
何らかの理由で墜落する場合は機体重量と落下対策。さらに墜落時の速度と高度によりダメージが決まります。
より重い機体が高いところから早い速度で接触する事が危険。
※このリスクは別ページにて解説予定
「プロペラ接触危険率」は全てのリスクを表現する手段で無いことに注目して下さい。
しかし、実際の事故の際にはプロペラ接触によるケガも想定することは重要です。
また墜落事故の場合も、プロペラが回転しながらと言うことも想定出来ます。

このページでは特定の機種を危険として紹介しています。
表現並びに取り扱いの観点から問題がある場合はこちらからお知らせ下さい。
お申し出の内容を熟考させていただいてから対応させて頂きます。

公開日:2012/10/04
最終更新日:2014/10/05
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