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ドローン空撮[技術解説] - リポバッテリー内部検査の理由

リポバッテリー内部検査の理由

ここでは、誰も教えてくれない、「リポバッテリーの内部検査の理由」を解説します。

まずは、周知の事実から確認。
・ノートパソコンなどのバッテリー異常発熱は繰り返されている
・B787のバッテリー問題は継続中
・空撮用途の動力バッテリーは、ノートパソコンとは比較にならないストレスに曝されている

何を言いたいか・・・

リチウム系バッテリーは確かに優れている。
様々な分野にて革命を起こした物のトラブルが絶えたことは無い。
そして、人々がどんなに努力しても根本解決には至っていない。
記憶に残っている2013年のB787のバッテリー改修問題。
最新鋭の旅客機に搭載されたリチウム系バッテリーの発火トラブル。
運行再開により露出は減りましたが・・・その後も発煙トラブルを起こしています。
この点からもリチウム系バッテリーの信頼性はコントロール出来ていないという証拠を示せます。

相当な手間暇で管理されている旅客機のバッテリーがどんなに努力しても信頼性が向上しない。
また、ノートパソコンやスマホのバッテリー起因の発火・異常発熱も無くなる事がありません。
そして、空撮に用いるリチウムポリマーバッテリーは、一般用途とは比較にならない瞬間出力が求められる。

重要なのは、そこにある現実を受け止めること。
0 [Zero]が悲観的とは言いませんが、楽観的な空撮のプロが多いのは問題です。

ご注意下さい
ここから先を読み進める際に、気を付けて頂きたいことがあります。
以下では、購入店舗や商品を具体的に示します。
あくまで、プロの使う道具という観点から述べられています。
このページなどを参考に、販売店などにクレームを出すなどと言う事は無いようにお願いします。

前置きが長くなりましたが、以下にて具体的に解説します。

3s2200mAh
製造ロット確認

←2014年3月29日購入
購入店舗:清水模型(静岡県)
購入本数:8本
備考:購入時に、入荷日を確認(数日前に入荷)

取り上げるのは、4月後半に予定されている業務に、使う可能性のある1.0kgクラスに用いるバッテリー。
「使う可能性」が有るだけで、この量を用意しています。
ちなみに・・・
この1年間で、非採用分も含めて、同等クラスのバッテリーは30本以上を購入済み。
本来なら・・・この8本の導入により、1年前に購入した同クラスのバッテリーが引退となる予定でした。
1.0kgクラスは稼働率が低いことから1年引っ張りました。(この数ヶ月は出動無し)
メインの2.0kgクラスでは、重要な撮影には1年落ちのバッテリーを用いる事はありません。
理由は、「リポは鮮度が命」だから。

3s2200mAh

1312×2本
1310×6本

困りました・・・
この日に同時に購入した、3,300mAhは、1402ロット。
16本全てが、同じロットでした。
この2,200mAhは、少し古めでロットも揃っていない。
ロットを印字しているフォントも違う。
つまり・・・全く別の工場でつくられたセルであるという推測も出来ます。
テープの巻き方なども、別の収まり。
評価の際には、別のバッテリーとして考える必要が出てきます。
もちろん・・・パッケージは同じ。
店舗の入荷のタイミングは、同じ。
でも、別のバッテリー・・・
これは、評価に困ります。

リチウムポリマーバッテリー考察
上記のページにて、ロット違いを避ける為に量販店巡りをしたと記しています。
この一手間を省いたことから、結果として使い物にならない物を購入してしまったという悪い例になります。
このところは、ロット違いが同じ便で入る事がなかったことから警戒していませんでした。
仮に、その場でロットを確認していたなら・・・
鮮度重視の観点から購入を見送っていたと思います。

ここから本題です。
なぜ、ロットを揃える事が重要なのか?
当たり前の事なのですが・・・リポバッテリーは工業製品です。
ロットが大きく異なれば、テスト結果の流用は出来ません。
もちろん、ロット番号が同じでも品質のバラツキがあることは否定しません。
しかし・・・ロット番号が異なった方が、品質のバラツキが大きい可能性が高いという事も工業製品では当然の事です。

リポバッテリーの内部検査をしない方に、問いたい。
「パッケージが同じでも、中身が別物」
これでも、内部検査の必要はありませんか?

3s2200mAh
テープの材質・巻き数にも意味がある

上記の1312と1310のバッテリー内部です。
赤い矢印の場所に注目。
左は点付け。
右はベタ付けです。
ここは、バランス端子ですので、点付けが正解。
ベタ付けには二つの問題があります。
・重量増
・短絡時の動作不具合

この容量のバッテリーは、短絡事故の際にはセルをつないでいるリボンがヒューズとして働きます。
ハンダの量が多いと、この際にヒューズが正常に動作しない可能性が残ります。(過去の短絡テストにて、この程度なら問題とならないことは確認してます)
リチウムポリマーバッテリーの短絡テスト

配線の確認以上に、フィルムやテープの巻き方の確認が重要です。
このメーカーでは、2,600mAh以上が短絡時に「弾ける」動作をします。
テープの素材などを間違えると、この際にトラブルが発生します。
製造現場で、一時的に該当のテープが在庫切れ。
その辺から、「代用品」を用いて製作した・・・などというのが怖いパターンです。
この、「代用品」を用いた製品は、通常使用なら問題無し。
墜落事故などで、短絡が起こったときに問題が発生します。
正常品:一時的に煙は出すが直ぐに収まる
代用品:発火する

ここでは、「代用品」として例えましたが・・・
テープの巻き数なども、同様の観点からチェックが必要な項目です。
巻き過ぎなら、短絡時の動作が異なってくることは言うまでもありません。

3s2600mAh

←テープ巻き数の確認例
この様に、並べるとテープ巻き数が適正か確認が出来ます。
もちろん、製造時や輸送時の打コンなどもこの段階でチェックします。
特にページは製作していませんが、これが0 [Zero]の、「いつも通り」です。

打コンに関しては、「軽微な物は問題無し」という認識をしています。
過去のページには記していませんが、常識の範囲の落下では致命的な損傷が無い事はテストしてます。

まとめ:なぜ、新品のリポバッテリー内部を確認しなければいけないのか?

1):製造ロット確認
2):テープ・ハンダ・打コン確認

これが、リチウムポリマーバッテリーの内部検査が必要な具体的な理由です。
製造ロット確認=定格性能の信頼性アップ
テープ・ハンダ・打コン確認=墜落時の想定外の動作予防

プロとして重要なのは、二つ目の項目。
墜落時に、燃える可能性がどの程度有るのか?
ここを示す場合の、具体的な根拠になります。

公開日:2014/04/17
最終更新日:2015/03/31
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