はじめに:
デジタル一眼レフ搭載可能。
そして、ある程度の風の中でも撮影可能。
ある程度の画質が期待出来、安全性も十分なバルーンという条件にて、
弊社:0 [Zero]と一般的なバルーンを比較します。
弊社:0 [Zero] | 一般的なバルーン空撮 | |
ヘリウムガスの使用量 [1本で約2.5万円] |
6,000Lボンベ 1本 [再利用可能] |
6,000Lボンベ 2~3本 [撮影毎に廃棄] |
撮影ポイントの移動 (ヘリウムガスの入替) |
6,000Lボンベ 0~0.2本 |
6,000Lボンベ 2~3本 [撮影毎に廃棄] |
準備時間 (現場到着から撮影開始) |
10分 |
30分~ [ヘリウムガスの充填] |
撤収時間 (撮影終了から撤収完了) |
10分 |
30分~ [ヘリウムガスの廃棄] |
5ポイント撮影した場合のヘリウムガス消費量 |
6,000Lボンベ 0.3本前後 |
6,000Lボンベ 10~15本 |
←車載式バルーン採用前の2008年の実務風景。
この撮影の3ヶ月後に、車載式バルーン空撮の機材開発が始まります。
当時は一般的なバルーン空撮会社と同様に、撮影毎にヘリウムガスを廃棄していました。
自動車の中に入っているボンボがヘリウムガス7,000Lボンベ。
重さは1本52kg。
この様な商用バンでは7本程度が積載の限界です。
このバルーンはフルサイズのデジタル一眼レフを搭載していますがガスの消費量は7,000Lボンベ1本。
エバールやカーボン素材を多用し、十分な軽量化が進んだ結果です。
ただし、開発初期であることから、風速3m/s程度が撮影の限界でした。
ヘリウムガス1本でフルサイズデジタル一眼が搭載出来る。
この様な進んだ設計のバルーンでも、撮影ポイントの移動毎に7,000Lボンベ1本を消費します。
業務では複数日に渡って10ポイントの撮影を行うなどと言う事があります。
この様な業務ではヘリウムガスボンベの運搬専用の車両が付随するなどというスタイルで業務を行っていました。
5):静岡学園新キャンパス(南東側)
撮影時間 8:17
※最後のシャッターを切った時刻
6):静岡学園新キャンパス(西側)
撮影時間 8:36
※最初のシャッターを切った時刻
機動性の高さはコスト以外のメリットもあります。
上記の実務では都市部の広大な敷地を東西から撮影。
短い距離ですが撮影ポイントの移動が発生します。
Aポイントの撤収からBポイントの撮影開始までが約20分。
道路を移動する時間を含んでの時間ですので、撤収と準備の実時間は20分を切っています。
この移動時間が圧倒的に少ないと言うのが0 [Zero]のメリットです。
撮影日の3月の静岡市は独特な風が吹きます。
日の出から10時頃までは無風。
10時頃からは強い東風が吹いてきます。
この風は時折5m/s以上。
この様な市街地では撮影不可能な強風です。
この撮影日も、9時頃から3m/sの風が吹き始めました。
ポイント間の移動が早いからこそ、この様な案件にも対応可能です。
0 [Zero]のバルーンは一般的な空撮用バルーンの半分以下のヘリウムガス使用量です。
絶対的なバルーンの大きさが小さい為、この様な市街地からも離陸可能です。
樹木と電線の僅かな隙間からも、バルーンを揚げる事ができます。
この時は事務所の駐車場をお借りして離陸を行っています。
なお、この様な条件では風速2m/s以下が条件になります。
大型(フルサイズデジタル一眼レフ搭載可能)のバルーンでは強風時に保持する人員やウインチなどを必要とします。
風が強くなると、バルーンは、「凧」と同じ様に引く力が強くなります。
強風では一人では支える事が困難になります。
0 [Zero]では開発当初に協力バルーン空撮会社に撮影を依頼した事があります。(その当時の機材は強風に弱かった為)
撮影時には8m/sを超える強風に見舞われました。
弊社からは2名の参加人員。
協力会社からは1名。
男性3名で、係留ロープを保持していましたが事故寸前まで追い込まれました。
先頭で保持していた、人員は一時的に空中に浮かんでいました。
風に強いとされる大型のバルーンはこの様なリスクに常にさらされています。
なお、この時のバルーンは7,000Lボンベ換算で2本クラス。
それでも、男性3名で限界です。
0 [Zero]の現在の機材では同じ条件で男性1名で対応可能。
それも余裕を持って対応出来ます。
0 [Zero]のバルーンは小型化を常に研究しています。
これは車載という主目的以外にも、強風でも1名で運用するという観点もありました。
車載式バルーンの運用開始から3年が経過しましたが基本コンセプトの正しさは結果で証明されています。
フルサイズデジタル一眼レフ搭載のバルーンでは平均的な運用人数は3名程度と考えています。
バルーン保持に2名。
カメラ操作に1名。
この場合は不測の強風に対応出来るのでしょうか?
0 [Zero]のバルーンはどんなに強い風でも1名保持が基本です。
これはどのような条件下でも、2名で安全運用可能である事の根拠になっています。
義援バルーン空撮
2011年7月12日の撮影から。
被災地の義援バルーン空撮は業務の合間や東北地方の業務の帰りなどに行っています。
毎回、限られた日数の急いだ撮影になります。
そして、湾岸部の膨大な範囲に津波の被害は及んでいます。
・風が強い(海岸)
・ポイント移動を要する
・足もとが安定しない
・撮影コストを落としたい (ヘリウムガスは1本 ¥20,000)
ラジコンヘリコプターを用いて、被災地を空撮される方はいても、バルーンでは皆無であるのには理由があります。
フライトには数万円単位のヘリウムガスを常に要する。
徒歩でも車両でも、移動は容易ではない。
他社ではバルーン空撮に機動性という概念はありません。
0 [Zero]が機動性に拘るのは実務ではスピードと信頼性が求められるため。
なお、機動性という観点からはUAV機などを含むラジコン空撮が最大の選択肢。
被災地の緊急性のある空撮では一番の選択肢です。
墜落のリスクよりは緊急性を選択するべきです。
0 [Zero]も、バルーン空撮の機材開発が一段落した段階で、ラジコン空撮を再開する予定です。
着眼点は安全性・画質・コスト。
重要と考える並び順も、この通り。
高価なハードウェアとパイロットを維持する為には安定した「業務」が必要になります。
普段の業務を延長して、緊急時には支援活動を行う。
0 [Zero]がやるからには、「一般的」な物は開発しません。
おことわり:
0 [Zero]のバルーン空撮部では東日本大震災の直後から、義援活動として被災地の空撮を実施しています。
義援バルーン空撮で撮影内容は公開されています。
この画像は商業利用以外での使用を禁じていますが著作権者が所属する企業での商業利用であることから例外的に認めています。
41) 専用車両の集中メンテナンス
40) α7RⅡ狂想曲:その9 Vix
39) α7RⅡ狂想曲:その8 ThinkPad P50考察
38) α7RⅡ狂想曲:その7 ThinkPad P50到着
37) α7RⅡ狂想曲:その6 バルーンを独自開発する空撮会社
36) α7RⅡ狂想曲:その5 レタッチャー用ワークステーションのテスト開始
35) α7RⅡ狂想曲:その4 今までは空冷でした・・・
34) α7RⅡ狂想曲:その3 超高解像度パノラマ加工に必要なパソコンとは?
33) α7RⅡ狂想曲:その2 現場で必要なパソコンとは?
32) α7RⅡ狂想曲:その1「α7RⅡ」後という世界・・・
31) α7Rの業務投入開始
30) 撮影時の服装に関して
29) α7R赤外リモートレリーズ
28) α7Rリモートレリーズ制作
27) α7R ILCE-7R到着
26) 機動性という品質
25) 強風下の撮影を可能にする「ヒューズ」
24) ミラーレス一眼はバルーン空撮のスタンダード
23) 眺望撮影の、「良い例」と、「悪い例」
22) 2009年版:空撮プロが使うレンズ
21) 0[Zero]のバルーンが風に強い理由。その1「尾翼が大きい」
20) 最大風速13m/sの乱流下のテスト画像公開
19) 開発失敗バルーンの例
18) バルーン小型化の研究
17) バルーン独自開発の道程
16) バルーン素材としての塩ビとエバール
15) 新型の開発は一時停止
14) バルーン繋留角度解説
13) 寒冷地専用バルーンテスト
12) 空撮スペシャリストの技
11) 空撮と送電線
10) 空撮の保険について考える
9) 2008年版:空撮プロはどのデジカメを使う?
8) ヘリウムガス不足と値上状況
7) 標高2100m:高地撮影テスト
6) 機材開発例:レンズマウント
5) バルーン空撮と風について
4) バルーン空撮テスト
3) 空撮システム開発解説
2) バルーン空撮専用車両
1) バルーン空撮とヘリウムガス