2008年7月に車載式空撮バルーンの4号機を開発しました。
スキー場などの「高地+極低温」と「夜景対応」が開発の主な目的です。
冬になってからの開発では1シーズンをムダにすることになるので開発は夏から始めています。
テストは7月。温度は20度を超えてているためにバルーン空撮には楽な季節になっています。(暖かいとヘリウムガスの浮力が増す)
本格的なテストは、「冬」を待たなければなりませんがこの時期に最も厳しい条件を捜して富士山に登りました。
標高2100m。外気温15度となる富士山四合目にてテストを行います。
バルーン空撮の性能を語るときに無視出来ない条件があります。
それが「標高」と「温度」です。
ヘリウムガスは特性上、比熱容量が非常に高いことが特徴です。
具体的に書くと・・・
・標高が高いと浮力が無くなる
・温度が低いと浮力が無くなる
つまり・・・
スキー場などの高地+低温の条件が揃うと本来の性能が発揮されないことになります。
←標高2100mのポテトチップ
標高が高い場所ではポテトチップなどの容器がパンパンに膨らみます。
空撮バルーン内部も、まったく同じ事が起こっています。
標高200mで適正に調整されたバルーンを標高2000mに持ち込むと・・・そのままで破裂してしまいます。
バルーン空撮専用車両にて登っていく間に、バルーンからヘリウムガスを抜くという必要性が出てきます。
空撮専用車車両がトラック=走行中に荷室に入れないではなく、フルサイズバン=走行中に荷室に入れるのは走行中にバルーンの調整が必要であるためです。
例えば・・・
1ポイント目の撮影が標高200mで完了。
2ポイント目の移動に標高1,000mの峠を越える必要がある。
この時に・・・どの程度のガスを抜く必要があるのか・・・
空撮専用車両を開発・維持するためにはこの様なノウハウ蓄積も必要になってきます。
上記の様な撮影案件では適切なスペアヘリウムを用意する必要性が出てきます。
1日に10ヶ所の山間部での調査空撮などを行う0[Zero]ではこの様な研究も必要になってきます。
当日のテストでは極めて優秀と呼べる結果がでました。
3号機と比較すると700Lのヘリウムガスの増量なのですがこの増量分が全て浮力に変換されています。
結果が想像以上に良かったため(テストにならない)、バラスト(重り)を取り付けてのテストになりました。
標高2100m 温度15度 高画質デジタルカメラ(キヤノン5D)+バラストという条件で実用になる性能を記録しました。
←風速1m程度の微風の場合はこの程度まで流されます。
しかし・・・風速3m以上の風が吹いてくると、浮力が生まれてバルーンは垂直方向に戻されてきます。
3号バルーンによる蔵王での高地テストでも確認されていますが風を浮力に変換するという0[Zero]のバルーンの優位性が今回も証明できました。
今回のテストから採用されたバルーン4号機は初の車載式バルーンである3号機と比較すると、空撮性能は著しく向上しています。
小型であるメリットと優れた対風特性により都市部での撮影では最高レベルの性能を有します。
その様な4号バルーンにも欠点はあります。
←尾翼を取り付けたまま、車に搭載。
3号バルーンでは尾翼を取り付けたまま車載が出来たのですが4号バルーンでは取り外す必要があります。
取付に1分。取り外しに1分。
僅かな時間ですが従来よりも準備時間を必要とします。
それでも・・・世界最速レベルの空撮であることは間違いありません。
バルーン3号機から700Lのヘリウムガス容量を増やしました。
空撮バルーンの直径と、尾翼部分のスペースもガス室という設計です。
ご覧のように、荷室にはバルーンが拡幅出来るスペースは残されていません。
ここまで、シビアな設計を行っているからこそ、「風に強く」「高画質」「常識外れの機動性」を全て叶える事ができました。
ここまで非常識(従来のバルーン空撮業者で発想できない)な機体の運用には通常では考えられない問題も出てきます。
それは移動中のバルーン破損です。
実は・・・3号機では車での移動中の破損(小さな穴あき)を経験しました。車内内装の僅かな突起物がバルーンを傷つけたことに起因しています。
軽量でガスバリア効果(ヘリウムガスが抜けない)と空撮バルーンの素材としては最適なエバールですが車載式として運用するにはノウハウが必要な素材です。
車載式バルーンで初めての本格的な夏を迎えます。熱拡張によるバルーン破裂とエバール素材の劣化の検討がこの夏のテストメニューの一つです。
41) 専用車両の集中メンテナンス
40) α7RⅡ狂想曲:その9 Vix
39) α7RⅡ狂想曲:その8 ThinkPad P50考察
38) α7RⅡ狂想曲:その7 ThinkPad P50到着
37) α7RⅡ狂想曲:その6 バルーンを独自開発する空撮会社
36) α7RⅡ狂想曲:その5 レタッチャー用ワークステーションのテスト開始
35) α7RⅡ狂想曲:その4 今までは空冷でした・・・
34) α7RⅡ狂想曲:その3 超高解像度パノラマ加工に必要なパソコンとは?
33) α7RⅡ狂想曲:その2 現場で必要なパソコンとは?
32) α7RⅡ狂想曲:その1「α7RⅡ」後という世界・・・
31) α7Rの業務投入開始
30) 撮影時の服装に関して
29) α7R赤外リモートレリーズ
28) α7Rリモートレリーズ制作
27) α7R ILCE-7R到着
26) 機動性という品質
25) 強風下の撮影を可能にする「ヒューズ」
24) ミラーレス一眼はバルーン空撮のスタンダード
23) 眺望撮影の、「良い例」と、「悪い例」
22) 2009年版:空撮プロが使うレンズ
21) 0[Zero]のバルーンが風に強い理由。その1「尾翼が大きい」
20) 最大風速13m/sの乱流下のテスト画像公開
19) 開発失敗バルーンの例
18) バルーン小型化の研究
17) バルーン独自開発の道程
16) バルーン素材としての塩ビとエバール
15) 新型の開発は一時停止
14) バルーン繋留角度解説
13) 寒冷地専用バルーンテスト
12) 空撮スペシャリストの技
11) 空撮と送電線
10) 空撮の保険について考える
9) 2008年版:空撮プロはどのデジカメを使う?
8) ヘリウムガス不足と値上状況
7) 標高2100m:高地撮影テスト
6) 機材開発例:レンズマウント
5) バルーン空撮と風について
4) バルーン空撮テスト
3) 空撮システム開発解説
2) バルーン空撮専用車両
1) バルーン空撮とヘリウムガス