0[Zero]のバルーンは開発当初から垂直尾翼が大きいことが一つの特徴でした。
これは明確な理由があります。
開発目標は「風速5m/sでも安心して空撮ができる」と設定していました。
この風速5m/sは時速に換算すると、18km/hという速度になります。
自転車を使えば人力で余裕をもって到達できる速度です。
確かに、風は体に受けるのですが「空力」と呼べるレベルの風圧は発生しません。
他社の風に弱いバルーンの多くは本物の飛行船や、飛行機などをモデルにしています。
時速100km/h(飛行船)や飛行機をモデルとした段階で、まちがったコンセプトで開発が進んでいると言えます。
0[Zero]のバルーンでは垂直尾翼図①が大きく、バルーン本体から離されて取り付けられています。
弱すぎる風(風速5m/s=時速18km)では小さな尾翼では十分な整流効果が期待出来ないからです。
なお、図②はバルーン本体(銀色の部分)が発生させる乱流を押さえる目的で取り付けられています。
質の高い風を垂直尾翼に導こうという考えです。
ひと頃はバルーンの小型化のためにバルーン最後端の形状をフラットな形にしていました。
これをガス容量は減っても尖った形状としたは同様な理由からです。
このパーツは風速1m/s程度の微風でも、10m/sを超えるような強風でも有効であることが確認出来ています。
図③は垂直尾翼と呼べないことも無いのですが・・・
少し違います。
飛行中はこの尾翼は地面に対して斜めになり揚力を発生させます。
バルーン本体の発生する揚力はガスが発生させる浮力と重心ポイントが異なります。
この尾翼により重心位置の調整を行っています。
これが無くても、対風性能は大きく変わりません。
変わるのはピッチングに起因する成果物(写真)です。
主に夜景撮影の画質を向上させるために取り付けられている部品です。
耐久テスト中の動画撮影から
バルーン本体や撮影部分の信頼性を確認するために、この様なテストを日常的にくり返しています。
現場は常に5m/s以上の風が吹いている状態。
地上では最大で13m/sを記録するなどと言う条件でのテストです。
ちなみに、自称「風に強い」とされるバルーンでも、風速5m/sが実用限界です。
10m/s以上に耐える・・・
などと言っていますが0[Zero]の様に動画が公開できないことが全ての答えです。
風速10m/sを超える様な条件でも、「楽」=業務として撮影を行うことがあります。
それは海岸です。
海からの一定の風は下降気流などが発生しないことから、風速10m/sでも問題になりません。
過去には平均8m/sという条件で4時間の業務を行ったこともあります。
同型バルーンの尾翼を補助翼のみ=普通のバルーン空撮会社と同じ大きさへ
タネも仕掛けもありません。
まったく同じバルーンの、垂直尾翼を小型化(普通の会社の大きさ)状態です。
補助翼が普通の会社の尾翼と同じくらいの大きさであったため、この様な動画を撮影してみました。
確かに、フルサイズデジタル一眼が重いので、条件としては優しくありません。
しかし・・・
コンパクトデジカメなどに交換しても、この傾向は変わりません。
普通の会社のバルーンは風速3m/sを超えると自社ホームページで公開可能な動画は撮影出来ません。
0[Zero]でもバルーン空撮の参入当時はバルーン機材製作会社によるエバールバルーンを使っていました。
風速2m/sで、まともに飛ばないという、オモチャのような性能のバルーンでした。
←尾翼開発中の写真。
各所の強度を仮に補強するために、カーボン棒が幾つも入っています。
重量・強度・帆の面積・製造コストなどを考えつつ、尾翼の改良も入ります。
0[Zero]の同じ飛びに近づけるには尾翼のテストと限定しても10回はテストフライトが必要でしょう。
なお、他社のホームページを拝見する限りは0[Zero]の様に尾翼に風を当てることが重要であることに気が付いている会社もあります。
2009年現在は空撮用バルーンの垂直尾翼は、「大型が良い」という常識は普及していません。
なので、半信半疑なのでしょうが・・・尾翼に風を集めようと言う考えはあるようです。
41) 専用車両の集中メンテナンス
40) α7RⅡ狂想曲:その9 Vix
39) α7RⅡ狂想曲:その8 ThinkPad P50考察
38) α7RⅡ狂想曲:その7 ThinkPad P50到着
37) α7RⅡ狂想曲:その6 バルーンを独自開発する空撮会社
36) α7RⅡ狂想曲:その5 レタッチャー用ワークステーションのテスト開始
35) α7RⅡ狂想曲:その4 今までは空冷でした・・・
34) α7RⅡ狂想曲:その3 超高解像度パノラマ加工に必要なパソコンとは?
33) α7RⅡ狂想曲:その2 現場で必要なパソコンとは?
32) α7RⅡ狂想曲:その1「α7RⅡ」後という世界・・・
31) α7Rの業務投入開始
30) 撮影時の服装に関して
29) α7R赤外リモートレリーズ
28) α7Rリモートレリーズ制作
27) α7R ILCE-7R到着
26) 機動性という品質
25) 強風下の撮影を可能にする「ヒューズ」
24) ミラーレス一眼はバルーン空撮のスタンダード
23) 眺望撮影の、「良い例」と、「悪い例」
22) 2009年版:空撮プロが使うレンズ
21) 0[Zero]のバルーンが風に強い理由。その1「尾翼が大きい」
20) 最大風速13m/sの乱流下のテスト画像公開
19) 開発失敗バルーンの例
18) バルーン小型化の研究
17) バルーン独自開発の道程
16) バルーン素材としての塩ビとエバール
15) 新型の開発は一時停止
14) バルーン繋留角度解説
13) 寒冷地専用バルーンテスト
12) 空撮スペシャリストの技
11) 空撮と送電線
10) 空撮の保険について考える
9) 2008年版:空撮プロはどのデジカメを使う?
8) ヘリウムガス不足と値上状況
7) 標高2100m:高地撮影テスト
6) 機材開発例:レンズマウント
5) バルーン空撮と風について
4) バルーン空撮テスト
3) 空撮システム開発解説
2) バルーン空撮専用車両
1) バルーン空撮とヘリウムガス