この日はバルーン動画撮影の機材テストで河川敷にあるテスト場に入りました。
梅雨の時期と言うことから、業務が薄くなることから集中的に機材の開発を進めています。
今回は低下した余剰浮力を補うために徹底的な軽量化を施しています。
この1年間では最大の軽量化を果たしています。
その重さは実に200g以上。
1年前の夜景撮影開発に伴う軽量化と同等の大幅な軽量化を実現しています。
そこで、0~2m/s程度の風が吹いていることを期待して河川敷に向かいました。
しかし・・・
現場は2~5mS程度の風が常に吹いていました。
このテスト場は事務所から30分程度の移動距離を必要とします。
何もせずに、帰るのはムダになってしまうので、強風下での動画撮影テストに切り替えました。
すると・・・
想定外の問題が発生しました。
飛行姿勢が明らかに悪いのです。
具体的には以下の現象が出ています。
・尾翼がフラフラとして飛行姿勢が安定しない
・ドリフト現象が出ている(写真の状態)
・繋留角度が60度を切っている
これでも、デジタル一眼レフを搭載してるエバール製のバルーンとしては破格の性能を保っています。
しかし・・・
0[Zero]の基準では不合格と言わざるを得ません。
バルーンが風上を向かない
これが全ての性能低下の原因です。
昨日の失敗から改修ポイントを絞り込みました。
バルーンが風上を向かうにはキチンと、垂直尾翼に風を当てることがポイントとなります。
程よい大きさの垂直尾翼を、可能な限り機体の中心点から遠くに設置。
その、垂直尾翼に質の高い風を当てる。
言葉にすると簡単ですがこれを現実の形にするのは相当な経験と生まれ持ってのセンスが必要です。
尾翼の大きさと位置からは過去の経験から問題なしと考えました。
ドリフト現象は尾翼に有効な風が当たっていないことの明らかな証拠です。
つまり「質の高い風を垂直尾翼に当てること」で解決できます。
質の高い=乱流成分が少ない進行方向からの一定の風と定義します。
改善点として用意したのは画像の矢印の部分。
「尾翼」なのですが風上を向ける目的ではありません。
銀色のバルーン部分の延長として、乱流を軽減することが目的です。
水滴型や翼型と呼ばれる形状で、乱流の少ない効率的な空力ボディを実現出来ます。
自動車などではある程度の重量増加も許されますが余剰浮力が少ない小型バルーンではグラム単位の軽量化が飛びに直結します。
乱流が発生するメカニズムさえ理解出来れば、この様な簡易的な部品でも十分な効果が発揮されるという好例です。
結果は良好でした。
「ピタッ」と張り付くように上空に止まっています。
ローリングが目立つのは自立安定バランサーを兼ねている撮影機材部分が軽量であることに起因します。
ピッチを抑制することを狙い取り付けられている水平尾翼の調整で対応できると睨んでいます。
このロールさえ止められれば、夜景撮影の限界風速上限を改訂出来る可能性も見えてきました。
41) 専用車両の集中メンテナンス
40) α7RⅡ狂想曲:その9 Vix
39) α7RⅡ狂想曲:その8 ThinkPad P50考察
38) α7RⅡ狂想曲:その7 ThinkPad P50到着
37) α7RⅡ狂想曲:その6 バルーンを独自開発する空撮会社
36) α7RⅡ狂想曲:その5 レタッチャー用ワークステーションのテスト開始
35) α7RⅡ狂想曲:その4 今までは空冷でした・・・
34) α7RⅡ狂想曲:その3 超高解像度パノラマ加工に必要なパソコンとは?
33) α7RⅡ狂想曲:その2 現場で必要なパソコンとは?
32) α7RⅡ狂想曲:その1「α7RⅡ」後という世界・・・
31) α7Rの業務投入開始
30) 撮影時の服装に関して
29) α7R赤外リモートレリーズ
28) α7Rリモートレリーズ制作
27) α7R ILCE-7R到着
26) 機動性という品質
25) 強風下の撮影を可能にする「ヒューズ」
24) ミラーレス一眼はバルーン空撮のスタンダード
23) 眺望撮影の、「良い例」と、「悪い例」
22) 2009年版:空撮プロが使うレンズ
21) 0[Zero]のバルーンが風に強い理由。その1「尾翼が大きい」
20) 最大風速13m/sの乱流下のテスト画像公開
19) 開発失敗バルーンの例
18) バルーン小型化の研究
17) バルーン独自開発の道程
16) バルーン素材としての塩ビとエバール
15) 新型の開発は一時停止
14) バルーン繋留角度解説
13) 寒冷地専用バルーンテスト
12) 空撮スペシャリストの技
11) 空撮と送電線
10) 空撮の保険について考える
9) 2008年版:空撮プロはどのデジカメを使う?
8) ヘリウムガス不足と値上状況
7) 標高2100m:高地撮影テスト
6) 機材開発例:レンズマウント
5) バルーン空撮と風について
4) バルーン空撮テスト
3) 空撮システム開発解説
2) バルーン空撮専用車両
1) バルーン空撮とヘリウムガス