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車両開発において「ドアの閉まり音」は意識されるか?

「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第二十六弾。

しばらく更新が途絶えていましたが、仕事に一定の目処が立ってきたことから更新を再開します。

車両開発において「ドアの閉まり音」は意識されるか?

Q:かつてディーラーなどで、クルマのドアを閉めてはその音を確認し、製品の良しあしを語るシーンが見られました。メーカー側、車両をつくる側はどうでしょうか? 開発の場面で、この「閉まり音」が論じられたり重視されたりするのでしょうか?
引用元 : 「車両開発において「ドアの閉まり音」は意識されるか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48526

回答例(webCG)
A:もはや開発の現場で、ドアの閉まり音が議論されることはないと思いますよ。
引用元 : 「車両開発において「ドアの閉まり音」は意識されるか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48526

以下、私の回答。
A:自動車開発の現場では、既に死語となっている事でしょう。

webCGでは以下に関しても語られています。
・ひと昔前のドイツ車
・86の「ドアスタビライザー」

車両開発において「ドアの閉まり音」は意識されるか?

質問されている方も承知してのネタ振りでしょう。
現在販売されているコンパクトカーですら大きな不満が発生しない話です。
でも、過去の国産車は・・・凄かったですね。
記憶に残っているのは、1990年代頃のマーチ。
これ、手洗い洗車の際にスポンジを滑らせるとボディーパネルが凹みました。
その頃はボルボ240(基本設計は、'70年代)に乗っていたのですが、もの凄くびっくりしたことを覚えています。

ひと昔前のドイツ車

ひと昔前は、「ドイツ車のドアは閉まり音がいい」などとささやかれ、例えばトヨタ社内でもそれをベンチマークにしなさいと言われた時代がありました。
引用元 : 「車両開発において「ドアの閉まり音」は意識されるか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48526

その当時のトヨタの開発姿勢が読み取れる発言です。
ドイツ車などは、高速道路での衝突安全に対策した結果、ドアの閉まり音が良くなったというロジックです。
でも、トヨタは販売の都合から吸音材を貼っていたと書かれています。
なんとも、その当時のトヨタらしいエピソードですね。

私の経験としては、友人が5台目のセリカGT-4(T180)型を新車で購入しました。
1990年頃かと思いますが、その車両に色々と取り付けるために内装をバラしました。
やはり、ラリー車のイメージが強かったことから、スパルタンな車だろうと思って臨んだところ・・・
想定外の遮音材(ゴム系)の多さに驚いていました。
その後、友人のGT-4は、私はこう呼んでいました。「ゴム鞠セリカ」と・・・

86の「ドアスタビライザー」

「86」ではドアとボディーの結合剛性をさらに上げるために「ドアスタビライザー」というパーツまで開発しました。
引用元 : 「車両開発において「ドアの閉まり音」は意識されるか? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48526

これ、良いですね。
コスパの良いボディー強化パーツだと思います。
本当なら新車に組み込んで、ドアスタビライザーあり想定でスタビライザーを細く出来ると良いですね。

以下は知財目線で解説していきます。
まず、ネット上に「特許」として紹介していた個人の方がいたことから解説します。
これ、特許では無く意匠登録です。

登録意匠 第1482722号、第1482723号、第1482724号、第1679500号
商標 登録6078120

近年、一部のECサイト/オークションサイト等で弊社製品「ドアスタビライザー」のコピー商品が確認されております。
弊社製品は自社の規格、安全基準に合格した製品のみを取り扱っており、コピー商品に対しての性能や品質を一切保証いたしかねます。
お客様に重大な危険が及ぶことがないよう販売店等でお確かめの上、ご購入ください。
弊社知的財産権を侵害するコピー商品に対しては、弊社は毅然とした態度で対応いたします。

引用元 : https://www.aisinaftermarket.jp/ja/sports-exterior/

どうやらアイシンさんが開発者です。
そして、コピー品に怒っています。
その気持ちは同じ開発者として良く理解出来ます。

まず、褒めたいのが「ドアスタビライザー」の商標を抑えた点です。
コピー品はネット販売が主たるルートです。その際の検索メジャーキーワードを押さえたのは大きいところです。
これで権利が一定は保障されます。
もう少し頑張って欲しかったのは意匠登録の部分。
確かに特許化は、あのタイミングでは困難だったかも知れませんが、今の状態では・・・ノーガードとも言えます。
これは、容易に回避が可能です。
つまり、商標を上手にクリア出来れば合法的なコピー品の販売の隙間は残っているのです。
繰り返しとなるのですが、「ドアスタビライザー」の商標が強い。
私が攻める側に立っているとすると・・・輸入車メーカーの純正部品としての採用を狙います。
そして、その採用メーカー主導であらたな商標の出願。
契約で、数年後の市販化も握ったうえで合法な範囲でダンピング。

コラム:空飛ぶ車と「ドアの閉まり音」

ここでは本業のお話しをします。
「自動車」と「空飛ぶ車」(エアーモビリティー)の世界では色々と常識が異なります。
今回のお題の「ドアの閉まり音」を実現するには、少なからず重量の増加を招きます。
狙いがボディ剛性(安全性)にあったとしても重量増という点は変わりません。
量産自動車の場合は、軽量化の姿勢は、「やっていますよ」程度の物です。
飛行体の世界では軽量化は命題です。何をさておいても取り組まなければなりません。
※多くの開発者が、ここを無視していますが・・・

「ドアの閉まり音」は、「空飛ぶ車」の世界では、「ペコッ」が正解です。
ドアが付いているのは当然ですがキャビンです。
ここに着陸加重の受け持ち加重が入る場合は異なるのですが、常識的な設計では剛性(重量)を持たせる理由がありません。
ここを強化してくるベンチャーは存在すると思います。
狙いは「集金のしやすさ」を狙ってです。
投資家が触れる部分で良い印象を持って欲しいと狙っているのでしょう。
そして、この狙いは大間違いです。

飛行体は、安全に飛ぶためにドアの音は、「ペコッ」が正解

重くなるという事は、飛行体の感覚以外の全ての性能でデメリットです。
・燃費
・信頼性
・安全性

この全てに主さはデメリットして働きます。
投資家は、過去に軽飛行機などを触れる機会は少ないハズで、高級車には日常的に触れている。
故に、「高性能な物はドアの閉まり音も良い」と思ってしまっています。
「空飛ぶ車」(エアーモビリティー)の世界が正常進化する為には、この常識を書き換える必要があるのです。
もろちん、私が現場に居るなら懇切丁寧に解説します。
様々な失敗例を用いて、無用な重量増が馬鹿げているかを説きます。

ここは、自動車に関する末端のページであることから更に掘り進めます。
自動車に関しては重量の重さはメリットもあるのです。
少なくとも停止状態からの発進で駆動輪への加重は味方です。
35GTR以降の車重を観察すると明らかに軽量化を敢えてしてない車両が見て取れます。
手持ちの車両では、現行のBMW M4が該当します。
先代のFRからAWDメインにシフトしました。
先代ではボディ補強にCREPなどを用いていた部分にスチールを使っていました。
車両価格は大幅に上昇しているにも係わらずです。
狙いは前軸への加重増と取れました。

飛行体の世界でも同じ様な事は起こっています。
ドローンと呼ばれるマルチコプターは、ある程度の重量が無いと速度が出せません。
機体サイズの割に軽量な機体設計をすると安定性が不足します。
連盟期のメジャーな期待は、機体起因の墜落が多かったのですがモデルチェンジの度に重量を増やして安定性を確保していました。

自動車も空飛ぶ車も、ある意味で重量や重心は可変である事が望ましいのです。
そして、どちらの世界も積極的にこの考えは採用されていません。
従来の飛行機は、結果として可変と言えない事も無いのですが、ここに気が付く現在のエンジニアがほぼいない。
既に出願済の部分なので書いてしまって良い部分なのですが、自動車も空飛ぶ車も、動翼を用いればここは解決出来るのです。
自動車ではグリルシャッターも含めたフロント回りの加重コントロールとリアスポイラーで実現は容易に可能。
実用車が上り坂を走っているなら・・・敢えて揚力を発生させて燃費向上という手法が残っています。
特に電気自動車で後輪駆動なら、この条件で後ろで揚力を発生させることのデメリットは少なくなります。
電気自動車の設計を私が見る場合は、まだ抗力対策もやり尽くすのに時間が必要です。
そして、抗力の削り代が無くなった段階で揚力発生の方向に動くと予想しています。
恐らくですが、2050年頃の電気自動車には走行中の登坂でに揚力を発生して燃費を伸ばしてくる車が出てくると考えています。
なお、この手のマルチコプターは既に他社にてCGが作成されていますが・・・これらは上手に飛びません。
彼らは揚力の発生のみに着目して、重量が必要となる条件に気がつけていません。
手前味噌ですが、2015年の段階で、この気がつきが盛り込また特許を出願しています。
巡航飛行時はあくまで軽量を狙った機体構成。
重量が必要となる垂直下降時に重心変化をさせるという機構です。
この重心変化機構も、重量物を支えているピンを外すというシンプルな物。
最低限の重量増加で、可変重心を実現させていました。
この特許ですが時代の先を進みすぎていて、2024年の段階でも実態化の必要は無い機体設計です。

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