「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第十三弾。
何度かWeb CGの「あの多田哲哉のクルマQ&A」の記事を追いかけています。
そして今回の解答で気が付いた事があります。
第2期(多田哲哉さん執筆)は、なんだか同じ様な質問を繰り返しているな・・・
何かの忖度?
Q:エンジン搭載車は、一部のメーカー・ブランドで言われているとおり、本当になくなってしまうのでしょうか? なくなるとしたらそれはいつごろになりそうか。多田さんの見解をお聞かせください。
引用元 : 「エンジン搭載車はいつ消える? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47777
回答例(webCG)
A:この問題は、技術的なことよりも政治的な思惑によるところが大きいと思います。現実的には、画期的な“エンジンに取って代わるもの”が出てきて、しかもクルマの価格が同程度以下になるというのは、なかなか想像しがたいですね。
引用元 : 「エンジン搭載車はいつ消える? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47777
以下、私の回答。
A:完全に無くなる事は数十年単位で無い。
無くなるとすると環境問題起因よりも自動運転絡みで無くなると予想。
そこまでとなると100年以降先の可能性もある。
webCGでは以下に関しても語られています。
・EVとインフラ
・燃料電池車(FCV)
・非エンジン車の価格に関して
以下で個別に考えましょう。
例えば電気自動車(EV)の普及を考えても、世界の奥地まで安定してバッテリーや電力を供給できるようになるにはかなり時間がかかります。
引用元 : 「エンジン搭載車はいつ消える? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47777
EV化は世界中の国々が一度に進む必要はありません。
奥地は、50年以内にEVが普及することは無いでしょう。
EV化は、出来る国から進めれば良い話です。
この大前提は動かしてはいけないのです。
ここでは典型的なEV化が進んでいる国の例として二つあげます。
その1:ノルウェー
・水力発電により安価な電力が豊富
・環境意識が高い
・ガレージに設備の用意があった
北欧のノルウェーは当然ですが冬期の温度は低めです。
EVとの相性は良くないはずですが・・・
普及率は高い。
それも、EVの初期から普及率は高めだったのです。
いくつか要因はあるのですが、もっとも高い理由と推測するのが、そもそも自宅ガレージにヒーター用の設備が用意されていた点です。
EV車の導入の為に自宅に工事を必要としなかった事は大きいと考えています。
なお軽く調べるとわかることなのですが、ノルウェーでもEVに対して一定の不満は出ています。
でも、この理由はEVに向かない方々までEVに手を出したから。
例えば充電設備が無いアパートに入居などが該当します。
その2:中国
・EVの覇権を狙う
・エンジン車後進国
中国は、ご存じの通りEV大国です。
ドローン関係のバッテリー供給も2024年現在は、ほとんどが中国からになります。
EVで新たな参入企業が増えるのは、エンジンの技術を必要としないから。
故に、中国もSONYも参入出来る。
かれらは、非エンジン車以外に賭けるしか選択肢が無いのです。
本題に戻ります。
EVは、無理なく普及が進むところからはじめれば良いだけです。
例えば現状で電気が通じてないような場所にEVは不要です。
なお、化石燃料は様々な都合で当分は供給が続きます。
石油商品を必要としている事からガソリン車の全廃は中国でもしばらくはありません。
なぜなら、重油やアスファルト、ジョット燃料やプラチックの原材料も必要。
EV車が普及したからといって、ガソリンで発電などをするのは・・・疑問ですね。
国内では、インフラの普及が低い事からEVが浸透しないとの論調がありますが・・・
そこ、少し違うと思います。
EVの運用には、それなりの知識も必要。
そして、ミスマッチの用途にEVを投入すると大きな後悔を伴う。
インフラというよりも家庭環境を整えるのが先なのに公共インフラを頼ろうとする段階でEVには不向きな生き方なんです。
こう言う方は、平日は乗らずに休日に高速を用いて長距離が多いはず。
これ、EVに向いてない用途です。
やはり、EVはそこそこの自動車通勤で生きてくるハズです。
充電は夜間に自宅でゆっくりと。
休日のドライブはスポーツ系のガソリン車やミニバンにて。
これがEVの正しい使い方です。
「次の時代のクルマとしてベストなのは、EVですか?」と尋ねられるのですが、環境問題とか、総合的な自動車の性能で考えるなら、明らかに優れているのは燃料電池車(FCV)だといえるでしょう。プロダクトとしては、EVの一歩、二歩先を行っている。
引用元 : 「エンジン搭載車はいつ消える? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47777
私も21世紀の初頭の頃は、FCVが普及する可能性があると考えていました。
理由は電動系の充電時間短縮には限界があるから。
でも2024年現在では、「乗用車としてはFCVが最終勝者となる可能性は低い」と考えています。
その根拠は以下となります。
・タンクのサイズと形状
・タンクの寿命と廃棄
・燃料費
・トヨタの特許
まず、ミライなどのFCV車のタンクを検索してみて下さい。
思ったよりも太いタンクを搭載していると思いませんか?
FCVは航続距離を伸ばすにはタンク容量を大きくする必要がある。
容量は容積以外にも圧を高める事でも可能。
そして、圧を上げると筒状となり、高さ方向を圧迫する。
高さを下げる観点から細めを多数搭載しようとするとコストが合わない。
なぜならば、FCVのタンクは高圧に耐える為にCFRPを用いるから。
センタートンネルに仕込むなら、大型FR車よりも太いフロアトンネルを必要とする。
後席座面下が一等地となるが、高さの関係から一本しか入らない。
それ以外に場所は事故の際の破損が心配。
設計屋から言いますと、FCV自家用車はパッケージで詰んでいます。
EVの様に平たく詰むという選択肢が永遠に取れない。
そして、衝突時の爆発の危険性も付きまとう。(EVは技術的に解決可能)
自動車として成立しそうなのが2名乗車の小型車です。
生活圏に必要十分な走行距離と、短時間の燃料充填。
余裕のある2名の空間とそこそこ広い荷室。
車としてもっとも近いのがコペンになります。
でも、ここは自動車メーカーとしては美味しくない。
FCVとして成立するのは、2名乗車か商用車と大型車でしょう。
次が、タンクの寿命と廃棄です。
ミライなどもタンクの寿命があります。
それは15年です。
ミライのユーザー層から考えれば十分かと思いますが、寿命が明確に設定されています。
ならばタンクを交換すればとなるのですが・・・
その交換費用は、その時点の中古車価格を大きく上回ります。
そして、寿命を迎えたタンクの廃棄には大きな問題が伴います。
それが、CFRPのタンクであること。
一昔前と比較するとCFRPの廃棄は容易になりました。
でも、多くの車にCFRPタンクが採用されて、ある時点から大量に廃棄が出てくるとすると・・・
それは、廃棄CFRPの需要をパンクさせる原因となります。
次は燃料費。
一部では、余剰電力を蓄える目的として水素が良いとの論調がありますが・・・
それ、効率が悪すぎます。
そもそもとして、電気は電気として使った方が効率が出ます。
具体的にはEVですね。
FCVがEVよりも明確に優れるのは充填時間。
でも、ここはEVが本気を出せば一発解決。
EV車には小さめのバッテリーを詰んで、EVスタンドでバッテリー毎交換すれば良いんです。
これ中国で普通にされてきたこと。
色々な都合から国内ではされていないだけです。
ここではFCVが普及しないという根拠になるので続けますと・・・
この様な交換式EVスタンドよりも水素ステーションの方が初期投資が大きくなってしまいます。
既存送電網を用いて十分な量のバッテリーをゆっくりと充電するなら、これがベスト。
繰り返します。
色々な都合(特許や政治)から、これを提示出来ないだけ。
これが示された瞬間にFCVは終了です。
なお、テスラなどもバッテリー交換の知財を出してますね。
この限定の方法だと先行している知財が、この時点(2017)でもありそうな雰囲気です。
US 2017/0259675 A1
最後が特許の問題。
引用元でも、触れられていますがFCV関係の特許はトヨタがリードしています。
そして、以下の様に実施権を条件付きで無償としています。
トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、燃料電池自動車(FCV)の普及に向けた取り組みの一環として、トヨタが単独で保有している世界で約5,680件の燃料電池関連の特許(審査継続中を含む)の実施権を無償で提供する、と発表した。
(中略)
特許実施権無償提供の具体的な内容としては、燃料電池スタック(約1,970件)・高圧水素タンク(約290件)・燃料電池システム制御(約3,350件)といった、FCVの開発・生産の根幹となる燃料電池システム関連の特許に関しては、これらの特許を実施してFCVの製造・販売を行う場合、市場導入初期(2020年末までを想定)の特許実施権を無償とする
引用元 : 「トヨタ自動車、燃料電池関連の特許実施権を無償で提供」2015年01月06日
https://global.toyota/jp/detail/4663446
この時の開示のニュースは覚えていました。
このページを書くために改めて調べて見たところ・・・
実施権の無償は期限があったのですね。
取り扱っている記事には、意図的なのか期限には触れられていませんでした。
これなら他社は現段階では本気で参入できる訳はありません。
でも、何社かは既存プラットフォームにFCVをお試しで出しています。
これ、いずれは切れる特許の、「その後」を睨んだ動きなら納得出来ます。
一度制作すれば、FCVには専用のフレームが必要である事。
そして、大容量EVよりは軽量に仕上がることは経験出来ます。
上記の引用は2015年ですので、主要な特許が確実に切れるのは2035年。
そのタイミングまでに本気で入るのかを検討してね・・・というメッセージですね。
特許は時間が解決出来るとして、CFRPの廃棄とかは解決出来るのでしょうか?
でも、ここが何とかなれば・・・まだ可能性は残るのかな?
特許に関しては、以下のコラムで掘り下げます。
少し注意が必要な表現があったことからコラムで取り上げます。
それは、「開示」に関して。
FCVを普及させる仲間を増やすべく、特許など技術に関する重要な情報を開示してはいるものの、それだけでは他社がキャッチアップできないほどの差がついてしまったため、業界全体として(もうFCVは諦めて)EVの量産を目指そうというムードになっている面もありますね。
引用元 : 「エンジン搭載車はいつ消える? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47777
問題は、「開示」という部分です。
この文章からはトヨタが積極的に開示していると読み取れます。
普通ならば重要な事柄は特許文章に記載されることから、特許文章以外の開示の必要性は無いと思います。
つまり、ここで言う開示は、特許の開示であるでしょう。
そして、特許は・・・
日本出願ならば、出願から1年半で自動的に開示されます。
これ、出願者(トヨタ)がどうのこうの出来る部分ではありません。
開示と実施権の無償提供は別の話です。
開示されるは当たり前で、トヨタはFCV関係の特許実施権を期限付きで無償提供していました。
特許は出願から一定期間で開示される。
特許制度のそもそもは、技術を埋もれさせないため。
一定期間のお墨付きを与える代わりに期限が切れた後はフリーにして産業の発展を図るのが狙いです。
なお、自動車などは相手に渡ることからバレてしまうのですが、製法などはプラックボックス化して独占するのも一つの戦略とされています。
そして業界全体がFCVをスルーするという表現がありますが・・・
ここも読み違えかと思います。
仮にFCVの波が来るならば、トヨタの基本特許が確実に切れる2035年以降です。
開示が本題なので過去のエピソードをひとつ。
それは、まだ私が特許に詳しくなかった頃の話です。
独自設計のバルーンを特許出願しました。
そして、特許化しないままファイルクローズ。
その後、その特許図面から他社がコピー品を製造。
この様な失敗を経て現在に至るのですが、今では部分的には自動車も特許の権利範囲になってしまっています。
俗に言う、「空飛ぶ車」の設計が仕事の一部ですので、結果として・・・FCVのレイアウトなども仕事の一部なんですね。
現実的には、画期的な“エンジンに取って代わるもの”が出てきて、しかもクルマの価格が同程度以下になるというのは、なかなか想像しがたいですね。
引用元 : 「エンジン搭載車はいつ消える? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/47777
これ、非エンジン車(EV・FCV・その他)は、エンジン車と同等以下にならないと読み取れますよね?
これ、大きな認識違いかと思います。
まずは開発費から。
EVの動力関係の開発コストが頭打ちとなるのはそこまで遠い未来で無いと考えています。
まずは、モーターの効率とエンジンの効率を調べて見て下さい。
はい。モーターの性能を伸ばす余地は既に少ないのです。
バッテリーは、まだまだ余地があるのですがエンジンの都合と大きく異なります。
それは、バッテリーの開発コストは、全てのメーカーで分散することが可能だから。
エンジンなどは、基本的には自社の自動車用に各々のメーカーが開発します。
でも、バッテリーは各メーカーで供用で構わないのです。
次は製造コスト。
ここも、いつかは逆転することでしょう。
モーターもバッテリーも、エンジンと比較すると単純です。
そして、動力部以外にもEV化によりコストダウンが可能になる部分も多数在ります。
私は、EVの方がエンジン車よりも安価という時代はすぐそこにあると考えています。
参考までに、空物ラジコンを取り上げます。
20年くらい前(ニッケル水素二次電池)は電動の飛行機などは現実的な飛行体として成立していませんでした。
ラジコン飛行機といえばグローエンジンという時代です。
これが、リチウム電池の登場とブラシレスモーターにより大変革が起きました。
メンテが楽で気軽に飛行が可能になりました。
コストもあっと言う間に逆転です。
ドローンの普及は自立飛行にあると思っている方がいますが・・・それ違います。
それまではシングルヘリコプターの様に高価且つ複雑なメカが必要だったのです。
エンジンの回転数を減速し、推力のコントロールの為にブレードのピッチ制御機構が必要でした。
これがマルチコプター(ドローン)により、モーター直結の単純なメカになったのです。
これにより、技術力の低い会社の参入も可能になり、低価格化が一気に進みました。
そして、国内に多かった老舗のラジコンメーカーは駆逐。
21世紀の初頭は日本が空物ラジコンの先進国でした。
2024年現在は、この地位は中国に渡っており、これが戻ることは当分はありません。
エンジンから電動に変わることは基本的にはコストダウンの方向に向かうとする根拠として取り上げました。
最後にもうひとつ示します。
まず、自動車メーカーが新型エンジンを開発しているかを調べて見て下さい。
明らかに開発速度は減速しています。
そして、バッテリー工場などの投資は拡大しています。
この流れは、口先だけでは無くEVの方向に進んでいるという明確な証拠になります。
エンジンは完全に無くなりませんが、路上のほとんどはEVに切り替わるという未来は来ることでしょう。
これが決定的になるのが固体電池搭載のEVが出るタイミングになります。
そして、このタイミングは2028年。
多くのメーカーが、この年に合わせて投資を継続しています。
恐らく、何らかの特許が切れるタイミングなんでしょうね。
私は、エンジンは当分は無くならないと思っています。
でも、今までの様にエンジン車が次々と出てくる様な状態は終わると思っています。
エンジン車が残るのは二つのパターン。
・奥地用
・趣味性の高い車両
もう少し踏み込むと、アフリカで用いるハイエースとスポーツカーが残ります。
これを書いている段階で86は第2世代ですが、これはモデルチェンジを繰り返しながら生産が継続されると考えます。
そしてスポーツカーユーザーが多めなブランドも同様に継続。
具体的にはポルシェ・フェラーリ・BMWとかが該当します。
恐らくですが、ポルシェは最後までエンジン+MTの生産を継続する事でしょう。
なお、2024年の時点では、私はEV車に全く興味がありません。
理由は、現状のバッテリーを用いたEVでは色々な意味で落ち着かないから。
なお、ハイブリッドすら未採用。
今時、珍しいですね。
ここまで徹底しているとエンジン好きかと思われるのですが・・・
仕事(飛行体のR&D)で電動系のことは良くわかっているだけに、今のEVは導入する気はありませんね・・・
確実に2028年を待ちます。
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