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ミニバンに大型サンルーフが設定されないのはなぜ?

「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第十四弾。

「空飛ぶ車」のR&Dを仕事する私には身近なネタでした。

ミニバンに大型サンルーフが設定されないのはなぜ?

Q:「パノラマルーフ」などと呼ばれる大型のサンルーフは、国産・輸入車を問わずさまざまなクルマに設定されるようになった印象ですが、なぜかミニバンではほとんどみられません。ルーフの面積が大きく、後席での開放感も重要と思われる車種なのに、なぜ積極的に設定されないのでしょう?
引用元 : 「ミニバンに大型サンルーフが設定されないのはなぜ? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48055

回答例(webCG)
A:重たいものが上にあるとロールオーバーの危険があるからですね。転倒防止の観点から、なかなか設定されず、普及しないわけです。
引用元 : 「ミニバンに大型サンルーフが設定されないのはなぜ? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48055

以下、私の回答。
A:重心位置よりフレーム設計の都合から。
特に、スライドドアとの同時装着を避けたいから。

webCGでは以下に関しても語られています。
・86にはサンルーフが無い
・窓の樹脂化

以下で個別に考えましょう。

T1N

ミニバンに大型サンルーフが設定されないのはなぜ?

ミニバンも含めて室内の空間を確保したい車の特徴。
・Bピラーは垂直に近く立つ(物によっては完全に垂直)
・ルーフ形状が平面に近づく(物によっては完全に平面)
・スライドドアの装着率高め

これ、代表的なミニバンが該当します。
そして商用バンの全てはこれ。
ちなみに、軽自動車のハイトワゴンも該当。
そして、輸入車には該当する車両が少ない。

数少ないスライドドア付き輸入ミニバンとしてメルセデスVクラスがありますが、あちらも片側スライドドア。
正規輸入が始まった、フィアット デュカトも片側。
写真は業務で用いたバルーン運搬車。
全高2.7mで、6立米のバルーンを運んでいました。

国産勢では両側スライドドアで無いと売れないとされています。
ここも日本がガラパゴスな分野ですね。

この形状になると、サンルーフが無くても天井には補強のリブが入ります。
また、左右のBピラーを繋ぐ天井補強も入る事が多いですね。(普通の国産ミニバン)
まず、この左右に走る補強が入る車両は前席からセカンドシートまでカバーする大型のサンルーフに対応するのは不可能です。

室内空間を広くしたいミニバンにBピラーを繋ぐ天井補強を抜くと・・・
・スライドドアとの相性が悪い
・フレームの補強で重量とコスト増(衝突安全対応費)
・セダンなどと比較すると異音も出やすい
・雨漏りなどのトラブルも誘発しやすい

ミニバンに大型サンルーフ(前席と後席頭上の全てをガラス面)が設定されない最大の理由はスライドドアの存在からです。
多田さんは重心が上がる事を理由としていますが、それならば両側スライドドアを採用している時点で矛盾が発生する。
でも・・・両側スライドドアだから、重心を上げる余地が無いと考えると正解なのかな?

ハイエース天井内部 なお、SUVや商用車では天井にリブが入ることが多いのですが、これは天井に荷物を載せる想定があるから。

←これ、機材車にして用いていたハイエースの天井です。
※遮音・断熱工事の途中に撮影

少しわかりにくいですが、Bピラーの付け根には特段の補強がありません。
それは、ハイエースは下部のフレームで積極的に剛性を出すという設計であることから。
完全にラダーフレーム時代の考え方の延長でしつらえられています。
ラダーフレーム時代の車両では天井がFRPという車両もありました。
ランクル40などが該当しますね。
この様なフレーム設計なら、天井に何を付けても良いことになります。

なお、ハイエースの後席エアコンはルーフに取付。
もしも重心の高さ故に転倒が心配なら、この様な納まりは無いですよね?

86にはサンルーフが無い

私自身、開発にたずさわった「トヨタ86」では、重心を1mmでも下げたいという考えがあったので、サンルーフを望む声も耳にはしていたものの「絶対に用意しない」と決めていました。
引用元 : 「ミニバンに大型サンルーフが設定されないのはなぜ? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48055

ハイエース天井内部

もの凄い拘りですね。
このページを見るまでは、この事実を知りませんでした。
この件を掘り下げる前に、現行型のトヨタGR86とトヨタスープラ。さらに、BMW M2とM4も加えて比較をしてみたいと思います。
条件は、現在購入出来るクーペのMTという点になります。

GR86 RZ 6MT スープラ RZ 6MT BMW M2 MT BMW M4 MT
乗車定員 4名 2名 4名 4名
全長/全幅/全高 4,265/1,775/1,310 4,380/1,865/1,295 4,580/1,885/1,410 4,805/1,885/1,395
最低地上高 130 117 123 120
ホイールベース 2,575 2,470 2,745 2,855
車両重量 1,290 1,520 1,710 1,710
エンジン 235ps/250Nm 387ps/500Nm 460ps/550Nm 480ps/550Nm
サンルーフ 設定無し 設定無し 設定有り 設定有り
カーボンルーフ 設定無し 設定無し 設定有り 標準
価格 3,476,000 7,313,000 9,720,000 13,580,000

この比較をして自分の為になりました。

GR86良いですね。

この価格で、この内容ならば文句なしです。
しかも、M4でも設定の無いACCが標準装備です。
これ、どこかで購入する可能性が高まりました。

なお、この表の作成の狙いは、GR86のサンルーフ非設定に拘りがあったのかの確認でした。
結論としては・・・

確かに拘りはあった。
正し、スポーツ性能の追求では無く安価に提供するという観点から。

サンルーフの設定が無いのはメーカオプションをシンプルにしてコスパを上げる観点から。
カーボンルーフをオプション設定などしないのも同様の観点から。
でも、キチンと良心はあり、二代目のタイミングでアルミ外板の使用率を上げてきています。

なお、M4は全く逆のことをしています。
先代のF82は、アルミボンネット。
エンジンルームの補強はCFRP。
現行のG82では、スチールボンネット。
補強はスチールに。
この部分を取り上げて「コストダウンが~」と言う方もいるかと思うのですが・・・
これ少し違います。
現行ではAWD化と共に明確にフロント加重を必要としました。
この観点からの狙っての重量増加です。
でも・・・6MTはFRなんですよね~。
ここ、全く無意味になっていることは少し悲しいお知らせです。

ハイエース天井内部

なお所有しているM4は、珍しいサンルーフ装着車です。
標準でCFRPルーフが装着されているのに、重量が大幅に増すサンルーフ装着です。
理由は、購入時点で国内に存在したM4のMT車両で、ボディカーラーが黒と白以外。
さらに非スポーツシート。
ここまで限定すると、コイツしかいなかったんです。
なお、比較したことが無いので非CFRPルーフのデメリットを感じた事はありません。
でも、はじめからGTよりの思考で選んでいる事から、これで問題なし。
なお、お代わりをする場合は、通常ルーフ(CFRP)を選びます。

窓の樹脂化

サンルーフに限らず、将来的には、フロントガラス以外のクルマのガラスはどんどん樹脂化していくと思います。いずれはフロントガラスも、かもしれません。まだ衝突時の安全性や遮音ではガラスに分があるものの、なんといっても樹脂は軽いですから。(車重のかさむ)電気自動車の時代に移行するにあたって、少しでも車重を軽くしたいという考えも、その流れを後押しするでしょう。
引用元 : 「ミニバンに大型サンルーフが設定されないのはなぜ? - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48055

注意して解答を読み解く必要があります。

ここでいう「樹脂化」は、何を意味しているのかでこちらの反応は変わります。
とりあえず、ポリカーボネイト(PC)は用いると思いますので、ポリカーボネイトとガラスを比較してみましょう。

・キズに弱い(アクリルにも劣る)
・単体ではガラスよりも割れにくい(盾に使われる)
・耐熱性が高い(アクリルよりも優れる)
・コート剤も含めた総合的な耐久性はガラスに大きく劣る
・意匠性が高い
・透明度はガラスに劣る(ここはアクリル最強)
・歪みが気になる(平板にすると)
・熱伝導率が低い

まず、ポリカーボネイトのみで構成しているとすると自動車の窓に用いられることはありません。
上記のキズが問題になるからです。
気になる場合は、「観覧車・ポリカーボネート」などで検索してみて下さい。

困るのが、合わせ窓やポリカーボネート・グレージングの解釈。
これらは、樹脂窓の大きな欠点は解消しやすくなります。
でも、合わせ窓なら枯れた技術ですので今更取り上げないでしょう。
ならば、ポリカーボネート・グレージングの事を「樹脂化」と解釈すると・・・
「まだ衝突時の安全性や遮音ではガラスに分がある」の部分で矛盾が発生する。
これ、どちらもポリカーボネート・グレージングの圧勝です。
オリジナルの文書を読み込んでも、「樹脂化」が何を意味しているのかが理解出来ない・・・
何か私が知らない技術があるとすると少し不安になります。

なお、数年以内に「空飛ぶ車」のスケールモデルを制作することになると思います。
その際には、最初期はアクリル。
世代が進むとポリカーボネートで窓は製作することになります。
ポリカーボネートは上記したとおりとても強い材料です。
これを用いると結果として窓枠が細く出来ます。
設計屋としては最終的にポリカーボネート・グレージングか純ポリカーボネート想定でガラスエリアの設計を行うことなります。
つまり、10年以上先の窓の物的特性を正確に予測出来ないと空飛ぶ車の仕様が固まらないことを意味します。
この様な考えから、新しい自動車の素材は研究しているのですが・・・
多田さんの言っている「樹脂化」が何を意味してるのかが理解出来ない・・・(私が知らないだけ???)

富士アクリルのアクリル水槽

←これは自宅の120cm水槽になります。
撮影は、2011年なので、既に13年が経過。
各部のサイズや部材の厚みから素材の組み合わせまで指定している特注品です。
ちなみに、今でも現役です。

外周がアクリルで蓋がポリカーボネイトになります。
これ以外にもガラス水槽も多数所有していることから、この特性に関しては良く理解しています。
この時点で狙ったのは、一人で動かせて十分な耐久性があること。
そして、補強部分などは目立たない事。
これ以前にはガラス水槽を用いていた事から、樹脂化により明確に電気代が下がったことも体感しています。

少し失敗したかと感じているのが蓋のポリカーボネートの部分。
ここ、普段の清掃で拭くことによりキズが増えています。
ま~再研磨すれば問題にならないんですけどね・・・

本題に戻ります。
電気自動車で樹脂系のガラスを採用したいのは、軽量化よりも冷暖房性能ではないかと・・・思っています。
電気エネルギーは熱に変換すると実は非効率です。
冬場のEVの性能が極端に落ちる原因のひとつが室内暖房にあります。
これを解決するには、樹脂系(合わせガラス含む)は非常に有効な対策になります。

過去の樹脂窓採用車は基本的には特殊な車両です。
日々の生活を共にする実用車には普通は採用されません。

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