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カーボンパーツの将来性について

「某自動車サイトのQ&Aと同じ質問にブログもどきが答えます」の第二十八弾。

夏休み期間中継続であることからまとめて更新します。継続・・・

カーボンパーツの将来性について

Q:高性能スポーツカーなどでよく見られるカーボンパーツは、軽量・高剛性なのが特徴とされていて、価格も非常に高価です。炭素繊維や樹脂といった素材からは、より低いコストで生産できそうな印象を受けますが、今後安く広く普及する可能性はあるのでしょうか? 逆に、そうできない理由があれば教えてください。
引用元 : 「カーボンパーツの将来性について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48565

回答例(webCG)
A:カーボンパーツについては、スポーツカーだけでなく、車体が重くなりがちなEVでの使用も念頭に、多くのメーカーが注目していた時期がありました。それで各社はカーボンパーツのコストダウンに取り組んだのですが、思ったほど安くなっていない……というのが今の状況です。
引用元 : 「カーボンパーツの将来性について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48565

以下、私の回答。
A:トヨタの車両と限定するとルーフ以外にカーボンが採用されることは無いでしょう。

webCGでは以下に関しても語られています。
・カーボンパーツの大きな欠点
・カーボンよりもアルミ

カーボンパーツの将来性について

少なくとも自動車業界では今以上に採用が多くなるという事はありません。

なお、私の本業である飛行体の関係ではカーボンはモノコック・汎用品共に無視することが出来ない重要な素材です。

私は10年程前にドローンのメーカーを立ち上げようと計画したことがありました。
その際には自社で釜を持つというパターンまで検討していました。
今でもこの可能性は消していませんので、自身でCFRPの作成者になる可能性が残っています。
一通り、カーボン関係は仕事として研究していることから・・・この質問は多田さんよりも私の方が知識がある世界かも知れません。

自動車という観点からは、少量生産のバンパー・スポイラーなどは可能性はあることでしょう。
でも、固定空力では・・・メーカーと大きな差違は出せないことから、動翼などを用いてあらゆる速度行きで純正(量産)を上回るなどというメリットを示す必要があるでしょう。
ハイスペックなスーパーカーでやっているエアブレーキも含めた制御ですね。
でも、ここまでするとショップレベルの仕事でも無いのかな・・・

ホイールもカーボンはあるようですが、ここは現実的では無いですね。
普通の国産車では、ホイール代の方が上回ってしまうかもです。
そして、耐久性の観点からも一般の方におすすめしたくは無いですね。

なお、足回りのアームなどのアルミからの置き換えもおすすめ出来ません。
モノコックが必要で低い位置であることからコスパが良くありません。

フロントフェンダーなどの外板パネルも無いですね。
カーボンを採用するなら、やはり応力は持たせるべき。
もったいない使い方です。

内装パーツにカーボンを用いる例は多々ありますが・・・
ここはデザインですからご自由に。

自動車の世界の軽量化は、カーボン採用前にすべきことが山盛りです。
また、タイヤ加重という観点から軽量化が必ずしもプラスに働かないという世界です。
今までの採用も絶対的な性能を求めてというよりはデザインからの採用が主流でした。
これから数十年先を考えても大きな用途は生まれてくることはありません。
でも、50年以上先なら話は違ってきます。
現在の熟練工と同じ動きが安価なロボットで出来る様な時代になれば、モノコックも劇的に価格が下がる可能性はあります。
でも可能性は低いでしょうね。

カーボンパーツの大きな欠点

コスト以外のカーボンパーツの大きな欠点としては、「リサイクルがうまくいかない」という点が挙げられます。
引用元 : 「カーボンパーツの将来性について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48565

いつも通り独自目線で行きます。

リサイクルが困難という点がCFRP(カーボン)の欠点のひとつである事はその通りです。
でも・・・同様にリサイクル時に問題があるリチウム電池は採用してますよね?
おかしいと思いませんか?
この、カーボンとリチウム電池というリサイクル時に問題がある材料が、量産車に用いられるかは以下の都合があります。

リチウム電池=量産が容易
カーボン(モノコック)=量産が困難

カーボンが採用されないのはトヨタの考える量産に対応出来ないからなんです。
確かに、BMW i3は、量産でCFRPフレームでした。
でも、トヨタの考える「量産」とは2桁の違いがあったことでしょう。
そして、BMWも「量産」の経験から、CFRPフレームからは撤退しています。

さらに、カーボンフレームの欠点を述べます。
それが、事故によりフレームが破損すると事実上の全損になるという点です。
事故の衝撃が入った際に見た目は問題なくても内部まで破壊が入っている場合もあります。
この検査には専用の機器と熟練者を必要とします。
そして、部分補修の難易度はスチールの比ではありません。

さらに、量産車のカーボンフレームの設計は成熟していないことから乗り味で色々と問題が発生することも想定出来ます。
振動なども減衰しにくいことも量産に向かない理由のひとつになります。
ロードバイクの経験者などは、「カーボンは乗り心地が優しい」と言うかも知れません。
まさに、そこが設計のノウハウが蓄積された結果なんです。
そして、人とエンジンでは出力特性に明らかな違いがある。
穏やかな出力の自転車とカーボンの相性は良いんですね。

カーボンよりもアルミ

私が思うに、これからパーツの材質として期待されるのは、カーボンよりもアルミでしょう。
引用元 : 「カーボンパーツの将来性について - webCG」
https://www.webcg.net/articles/-/48565

質問者は、「低コスト」という観点から質問していますので、「カーボンよりもアルミ」という回答に異論はありません。
正し、「低コスト」という観点からはスチールも無視できないんですけどね・・・
軽量とコストのバランスでも適切なスチールの採用は有効です。
なお、カーボンを用いても、数十のパーツをひとつにまとめる事は可能なのですが、上記している通り量産が困難であることは採用はありえません。
後は、車両に用いられる材料は金属ではマグネシウム合金。樹脂類も重要ですね。
ここで取り上げている材料は、全てリサイクルが容易な材料です。

なお、私はマグネシウムにてドローンを良く製作していました。
恐らくですが、国内では初のハズです。世界は・・・広いのでわかりませんが見かける事はありませんでした。
なお、カーボンでは無くマグネシウムを採用した大きな理由が「破損が形で残るから」でした。
宅配ドローンなどを現場で用いている際に、破損したフレームのまま飛行させるなどという事故を排除する目的からでした。

コラム:汎用材とモノコック

カーボンは少量生産ならコスパの高い方法があります。
それが、汎用板や汎用パイプを用いることです。
これらの汎用材は比較的安価であり、軽量・高剛成のカーボンのメリットを受けつつコスト増を最低限に留める事が出来ます。
※もちろん、リサイクル問題は解決されない。
産業用ドローンの世界では定番の設計です。
では、自動車で採用が無いのはどうしてか?
それは、「汎用パイプなどを用いる場所が無いから」になります。
自動車は、必要とする形に造形するモノコックが必要です。
故に量産に向きません。
量産車で可能性があるのはルーフであり、ここは簡単な型で製作が出来るからになります。
BMWのM4のルーフなどがこのパターンですね。
なお、量産車でボンネットのカーボン採用が少ないのは、重心と造形と衝突安全の関係から。
ルーフの方が費用対効果が高いという事です。

レーシングカーや少量生産の車では、運動性能と安全性の両取りが出来るカーボンモノコックは必須となっています。
どちらにしても少量製作であることから、量産性の悪さは欠点とはなりません。
初期の頃の耐久性や補修の問題は解決していると思いますので、この手の車両を購入するのも良いかも知れません。

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