今回の設計変更では当初から考えにはあったのですが触れたくなかった設計志向に向かいます。
それは・・・
重量増は無視して最大の垂直尾翼を取り付ける
これをすると・・・安定することは過去の経験からわかっているのですが・・・
目的の一つであるスキー場での空撮CubicVRの撮影からは遠ざかる事になります。
つまり・・・
大きな尾翼=重い
スキー場=寒い+標高が高い=ヘリウムガスの浮力が減る
重たい機体ではスキー場の撮影は出来ない・・・
最終的には高地にての極低温テストを行わないと答えは出ないのですが今の段階でも徹底的な軽量化は行っておきたいのです。
同じ性能を出せるなら、より軽量な方法を捜すのが今の仕事です。
バルーン空撮屋は真冬のスキー場で撮影など誰も考えていません。
風を嫌うバルーン空撮では徹底的にこの分野の撮影から逃げるハズです。
0[Zero]ではこの場所での氷点下での空撮CubicVR撮影を目標の一つに設定しています。
もちろん、用いるバルーンは車載型です。
撮影当日は晴れ間が時折覗く梅雨空です。
動画の画質も優れなくて申し訳ありません。
←敢えて、加工は少なめです。当日はこんな天気でした。
今までは、「ピッチングが・・・」などと言う専門的な用語を使うため、具体的に何が悪いかが伝わらなかったと思います。
動画を採用することにより、「風を掴まないために、ヨーが収まらない」という現象が視覚的にわかるようになりました。
撮影場所も時間も、可能な限り同じ様になるように近づけました。
同条件でも、空力設計が少しでも違うとバルーンの性能は大きく変わると言うことがわかって頂けると思います。
この日のテストの目的は尾翼の大きさのチェックです。
同じ機能なら、小さい方が軽くなるために有利になります。
空力再設計2回目の時よりも、追加部分が5割ほど大きくなっています。
大きくした理由としては風速1m/s以下の微風時の風見鶏効果の増強の為です。
風見鶏効果とはその名の通り「風見鶏」の様に風上に機首を向かわせる事を言います。
これが弱いと上空でバルーンはフラフラとさまようことになります。(動画2が良い例)
多くのバルーン空撮会社はこの現象が出てきたときに判断ミスをしています。
「ビルの陰で風が巻いていると・・・」つまり、ビル風などの乱流がでているためにバルーンが一定方向を向かないと思いこんでいるのです。
半年前の、私たちがまさにコレでした。
動画の撮影時は風速4m/s以上の風が吹いているときを狙って撮影しています。
最初は、「風に強い」事を具体的に示した方が良いかと思いましたので・・・
繋留角度に注目してください。
この撮影時の風はアドバルーンの繋留が中止になる様な風です。
性能の低いアドバルーンはこの時に45度の繋留角度になっています。
エバール製バルーン、尽く撮影中止。
20立米クラスも撮影が怪しくなってきます。
その様に強い(バルーン空撮的に)風にもかかわらず、70度以上の繋留角度を保持しています。
しかも・・・
ビタッと空中に静止しています。
夜景空撮の開発の為には0~5m/sという巾を持った風の中でも空中に静止することが必要です。
この初期の目的はこのテストでクリア出来たと言えます。
ただし・・・温度15度以上。高度500m以下と言う限定は付いています。(この条件でも実務の7割はクリア)
当日のテストの本命は0~0.5m/sの微妙な風です。
バルーン全長の4割を占めるような巨大の尾翼はこの様な微風時にカメラを、「ビタッ」と止める為だけに作られています。
こちらのテストも・・・予定通りの性能とお伝えします。
クレーン並とは言いませんが数倍のヘリウムガスを用いている他社のバルーンよりもバルーン4号機の方が性能は優れていると言い切れます。
使用ヘリウムガス7立米以下・デジタル一眼レフ搭載可能というバルーンでは世界最高クラスの性能でしょう。
これはダンパーと呼ばれる部品です。(これはテストとは別のコントロールシステムの写真)
使用するカメラの重量・温度・ターゲットとする風速を元に、オイル粘度とバルブ穴の調整により固さを決定しています。
テスト時は梅雨ですが気温は十分高いためダンパーオイルの粘度が上がっています。
バルーンの震動と、ダンパーの減衰力の釣り合いが取れたときに、「ビタッ」と止まります。
こちらの調整は昼間の4m/sの条件下で合わせても余り意味が無いと言えます。
夜景時に気温が下がり、風も弱まると・・・昼間の設定では固すぎるという現象が出てきます。
0[Zero]のバルーンは極めて高性能ですが運用するにはベテランのスタッフが必要です。
現場の風・温度・高度。必要とする撮影素材と採用する撮影機材の組み合わせ。
全てが揃ったところに、空力やダンパーなどの微調整。
慣れれば、現場に入ってから10分で済ませられる事なのですが・・・
ここに行き着くまではもの凄い数のテストがくり返されています。
0[Zero]は車載式バルーンを実現するために徹底的な機材の軽量化を進めています。
このページでも、0.1g単位のシビアな開発現場を紹介しています。
その1gに拘る0[Zero]が50g近い重量増となるダンパーを取り付けています。
それには二つの理由があります。
・高度が変わっても、カメラが水平であること
・大きな衝撃を吸収すること
個別に解説します。
◆高度が変わっても、カメラが水平であること
0[Zero]のバルーンではバルーンの前方に繋留ハーネスが付いています。
高度が上がると(200mくらい)、ハーネスの重さがこの位置にかかることから、地表付近にいるときよりもバルーンは前のめりになります。
自立安定を高めるために、撮影システムはバルーンと剛に結合されてるためシステムも傾きます。
つまり・・・
高いところでは水平に写真が撮れないのです。
どのような高度で撮影しても、常に水平(もしくは相対角度固定)なのはこのダンパー部分のお陰です。
◆大きな衝撃を吸収すること
これは10m/s程度での強風時に必要になってきます。
突然風の向きが変わったり、何らかの破損が発生した場合はバルーンの姿勢は大きく乱れます。
空撮バルーンに使われいる部品で最も重いのはカメラ+レンズです。
このカメラがバルーンに剛接続されていると、バルーンその物を破損させる事になります。
この緊急時に剛接続をキャンセルするのがダンパー部分です。
墜落時は尾翼の破損からバルーンの破損による墜落までは数分のタイムラグがあります。
バルーンの破損は壊れた尾翼が本体に刺さったことであったため、このキャンセルシステムは正常に作動していたと思われます。
この様な機構は一般のバルーン空撮会社には組み込まれていません。
高度100m程度の撮影では0[Zero]のパノラマ画像の場合「水平線が綺麗に通ります」
「ビルが垂直にたちます」
当たり前の事なのですがこれが出来ていない空撮会社が多すぎます。
バルーン空撮は、「安価」だけがメリットでは無いのです。
高度300m以下では、「画質」「機動性」「安全性」のバランスがもっとも取れている空撮です。
25)2015年現在の夜景バルーン空撮の現状
24)2012年現在の夜景バルーン空撮の現状
23)初夜景テスト キヤノン5D MarkⅡ
22)キヤノン5D MarkⅡ導入
21)開発中間報告
20)空撮専用車両の改造
19)WT-4の落とし穴
18)ニコンWT-4導入
17)夜景撮影テスト5回目
16)軽量化 -213.1g
15)軽量化 -27g
14)ニコンD700導入
13)強風対策=尾翼強化
12)夜景撮影テスト4回目
11)夜景パノラマ空撮カメラ?
10)夜景撮影テスト3回目
9)夜景撮影テスト3回目
8)墜落撮影機材の修理
7)墜落撮影機材のダメージ
6)臨時対風テスト=大失敗
5)空力再設計2回目
4)夜景撮影テスト2回目
3)空力再設計1回目
2)夜景撮影テスト1回目
1)世界初のCubicVR撮影を!