開発中のバルーンは夜景撮影テスト4回目にて最大風速10m/sに達する風の中で非常に優秀な基本性能を示しました。
風の止み間を狙った撮影でも、状況を考えれば十分な撮影内容です。
しかし、細かな改善点も見つかっています。
現在の姿勢の乱れはバルーンの、「ヨー」「ローリング」の二つの細かい動きです。
動画でも、わずかですが動きは出ています。
昼間の撮影では全く問題になりませんがスローシャッターを必要とする夜景撮影では非常に重要な差です。
この細かな動きの理由は前回の諏訪湖での夜景空撮でわかっています。
それは垂直尾翼が動くことに連動しています。
現在の尾翼は何回もの、「建て増し」により運用性が悪くなってきました。
当初は現場入りから5分で離陸出来ていたのですがこの頃は最低でも10分。
現場の風が強いと15分の時間を必要としています。
今回の設計変更では強度を主眼に置いていますが同時に運用時間の短縮も同時に行います。
目標は風の強い現場で8分。通常の現場では5分です。
この様な細かい開発が始まったと言うことは・・・
夜景空撮バルーンの完成は近い事を意味しています。
今回の尾翼開発のコンセプトは強度です。
バルーンのローリングの原因が尾翼の強度にあることを確かめる為に、多少の重量増は覚悟して尾翼の強度を上げることになりました。
強度は尾翼を支えているカーボン材の太さで決まります。
従来は最大で8mm。
今回は一気に14mmまでサイズアップを行います。
この太さのカーボン材を使うことにより、しなり量は1/5以下。
重量は150g増と試算されています。
カーボン材は軽量・高強度とバルーン空撮には欠かせない材料です。
非常に優れた材料なのですが問題もあります。
それは入手性と価格です。
今回の尾翼の試作ではブルーのフィルムで巻かれた、右側の束をネットにて購入しています。
これだけの量で、2万円です。
写真内に、尾翼カーボンの太さを決めるために検討していた在庫がありますが・・・
これだけで、数万円の材料です。
開発中はこの位のロットで複数回の購入となります。
今回の夜景撮影では既に3ロット(約8万円)のカーボン材を購入しています。
仮に、今回の設計変更でOKとなった場合もスペアを制作するために、最低でも2万円のカーボン材購入が必要です。
8mm=従来のカーボンパイプ
昼間の撮影ではこの太さがベストです。
風速10m/sに余裕で耐えて、バルーンの動きも最小限。
過去のテストでは6mm~12mmのカーボンパイプを用いています。
太さもと軽さも大切なのですが長さと取付方法にも注意が必要です。
このバランスが崩れると、車載式バルーンの様なギリギリの設計ではまともに空を飛びません。
重量も2mで67gと軽量に収まっています。
現在のバルーンでは垂直尾翼の支えとして、このカーボンパイプを2本用いています。
14mm+12mm=新型尾翼のカーボンパイプ
比較として、下側に8mmのカーボンパイプを置いています。
圧倒的な太さの違いです。
ここまですると、カーボン棒の曲がりに起因する尾翼の動きは完全に止められますが・・・
1本に56g。2本で112gの重量増となります。
この部分の強度が上がることから、他の場所では、「より細い材料」を選択し軽量化することが可能です。
トータルで、100gの重量増と設計段階では見積もっています。
なお、今回の改良により予想以上に良好な結果が得られた場合はカーボンパイプを相対的にワンサイズ下げて尾翼を試作することになります。
数十グラムでも軽くしたいのが・・・小型バルーンによる空撮の辛いところです。
カーボンパイプはアルミや木材などと違う制作技術が必要となります。
結合部は瞬間接着剤・エポキシ接着剤により面結合されます。
接着剤と触れる表面積を増やすために事前にサンディングされた結合部分です。
新型の尾翼では14mmと12mmのカーボンパイプを繋げて強度と軽量化を狙う為、接着ヶ所が多くなります。
瞬間接着剤ひとつとっても「粘度」毎に4種類の在庫があります。接着素材と接着用途により、この4種類を使い分けることになります。(エポキシは硬化時間毎に3種類)
「促進剤」と、「低粘度瞬間接着剤」を併用し軽く強度のある接着部を制作しています。
この部分は尾翼とバルーンの結合部分になるパーツです。
尾翼に受けた力を最も受ける場所です。
これがこのバルーンで最も太いカーボン材となる16mmです。
注目して頂きたいのはエンド部分の処理です。
針金を何回か回して、エポキシ樹脂で固めています。
この部分は実務ではカーボンインナー材を抜き差しするために、応力が集中します。
つまり・・・カーボンパイプが割れやすいところです。
この割れを防ぐための補強です。過去のテストから、最も軽く信頼性のあるカーボンパイプのエンド処理です。
莫大な数の開発とテストをくり返していることから生まれる軽量化技術の例です。
0[Zero]は自社にて空撮バルーンや撮影システムの、「開発」「製造」を行う空撮会社です。
事務所には作業場が併設され、精度の高い、切断・穴空加工が可能になっています。
アルミ削りだしなどは外注のNC旋盤などを用いますが尾翼に用いるカーボン骨材の加工などは100%自社制作となります。
設計通りの空力特性を得るためには精度の高い加工が必要になります。
確かな基本設計と、精度の高い作成技術により0[Zero]のバルーンは生まれています。
従来のバルーン空撮業界には無かった車載式バルーンなどは0[Zero]の徹底的に技術を極めるという姿勢から生まれました。
25)2015年現在の夜景バルーン空撮の現状
24)2012年現在の夜景バルーン空撮の現状
23)初夜景テスト キヤノン5D MarkⅡ
22)キヤノン5D MarkⅡ導入
21)開発中間報告
20)空撮専用車両の改造
19)WT-4の落とし穴
18)ニコンWT-4導入
17)夜景撮影テスト5回目
16)軽量化 -213.1g
15)軽量化 -27g
14)ニコンD700導入
13)強風対策=尾翼強化
12)夜景撮影テスト4回目
11)夜景パノラマ空撮カメラ?
10)夜景撮影テスト3回目
9)夜景撮影テスト3回目
8)墜落撮影機材の修理
7)墜落撮影機材のダメージ
6)臨時対風テスト=大失敗
5)空力再設計2回目
4)夜景撮影テスト2回目
3)空力再設計1回目
2)夜景撮影テスト1回目
1)世界初のCubicVR撮影を!