Ver6_img

バルーン夜景空撮[技術解説] - 空力再設計2回目

2回目夜景撮影テストの問題点の改善

実施日:2008年7月11日 12:00
実施場所:山梨県内 御坂桃源郷公園近く
バルーン:Ver4.11
風速:1~3m 平均2m
テスト内容:垂直尾翼の延長とヨーイングの因果関係の確認

夜景撮影テスト2回目では、「ヨーイング」(回転方向のバルーンの揺れ)に悩まされました。
パノラマ夜景空撮は出来たのですが確実性がありません。
カメラマンの経験値により撮影される画像にバラツキがでます。

そこで、ヨーイングのコントロールの為に幾つかの対策候補を考えました。
過去に開発されているバルーンでも同様な対策を行っているので、確実に結果が出せる以下のような対策からテスト機材を開発します。

1):垂直尾翼の延長
2):ジャイロにてヨーイングを打ち消す

1):垂直尾翼の延長?

3号バルーンでも、ヨーイングの改良を行ったことがあります。
この際には垂直尾翼の強化にてクリアしているので、今回も同様な手法で解決できると思われます。

2):ジャイロにてヨーイングを打ち消す?

カメラのコントロール部分には360度を無限に回転できるモーターが搭載されています。
このモーターにジャイロからの信号を混ぜて、上空でのヨーイングを打ち消すという方法です。
夜景撮影にも有効ですが昼間の調査目的にも応用が出来そうです。
重量増も、ジャイロ分の重さなので、20g以下という軽微な重量であることも魅力です。

この日までに、上記の対策は両方とも準備を行っていました。
垂直尾翼の延長は簡易なテスト用追加尾翼の準備。
ジャイロは手持ちのRCヘリコプター用を取り付けてヨーイング対策に有効であることを確認しています。

梅雨の合間の、貴重な、「風」

6月に入ってからバルーンによる夜景CubicVRの開発に入ったのはある理由があったからです。
それは・・・ 梅雨です。

梅雨の為に、空撮業務が少なくなることから、大幅に機材の組み替えなどを行う開発を、この間に完了させようと計画したからです。
テスト画像が「美しく無い」のは単純に・・・梅雨であることが原因です。

この、梅雨はテストを開始してから大きな問題がわかりました。
「梅雨の時期は風が吹かない」
テスト項目は、「微風」であることよりも「それなりの強風」であることが望まれます。(実務では可能な限り風が無いことを望みます)
この日は貴重な風が吹いてきたために、尾翼テストに入ることになりました。

第2回空力再設計のテスト結果

風速1~3m/s
ヨーイングは止まっています。
追加尾翼を、「付ける」「外す」「付ける」「外す」とくり返しました。
写真では赤く写っているテスト用の追加尾翼は良好な結果を示しました。

また、空力バランスが優れてきた事から、素晴らしいバルーンの繋留角度です。
この繋留角度は都市部での撮影で武器になります。
今回のテストで、尾翼を後退させる事が微風から弱風では有効であることが確認できました。
今後は尾翼の作り替えを行うことになります。

コラム:プロの開発現場
テスト用尾翼

←今回のテストのみに制作された延長尾翼(赤)
尾翼は以下の要素のバランスを見極めて設計されています。
・撮影時の風の強さ
・バルーン本体の空力特性
・目標とする総重量
・限界対風性能

大きくすれば・・・機体が安定するという物でもありません。
「エコバルーン」である小型の車載バルーンでは限られたヘリウム使用量であることから、限界の余剰浮力しかありません。
大きな尾翼は機材の総重量を押しあげて余剰浮力を奪います。
最低限の重量で最大限の効果を出すことが求められます。

今回のテストで制作された尾翼は1回のテストで役目は終わります。
テストにより、大きさや形状が検討されて、耐久性の高い製品版の制作が行われます。

凧の帆の材料(フィルム系)で制作された、今回の尾翼は、「軽い」のですが繰り返しの実務では耐久性に問題があります。
ブロの機材に必要とされる能力の一つに「安定性」があります。
いつでも一定以上の能力が確実に保証されることが必要です。
今回の様なテストも論理を机上でまとめ上げ、それを実証するために形にしています。
形にする際も、「本番用の作り方」では時間もコストも必要です。
そこで・・・1回限りの簡易的なテスト機材にて論理を確認するテストを行います。
今回に用にテスト結果がよいと・・・本番パーツを制作することになります。

開発速度を上げるためには・・・
・数多くの理論の机上検討
・理論を速やかにテスト形状にまとめる
・テストにより理論の検証
・テスト結果から形状などの再設計
・さらにテスト

開発の現場では製品版の陰に隠れてしまう、テスト機材が山のように作られています。
今回の夜景空撮機材に限りませんが0[Zero]の事務所にはデジタル一眼レフカメラと限定しても10台。
バルーンは大型の物で4台の在庫があります。
0[Zero]では今回のようなハードウェアのみならず、航空写真ナビのようなソフトウェアまでも独自開発を行う、国内で唯一の空撮会社です。

公開日:2008/07/16
最終更新日:2013/06/27
前へ一覧次へ
Home | ドローン空撮 | バルーン空撮 | 社長ブログもどき | 会社概要