デシタルカメラ一式を含む撮影機材は上空30mから墜落しました。
その後、バルーンにも大きな穴が空き、全ての機材は墜落。
テストとして選んだ場所は周囲に人家などが無い場所です。道路などからも離れていることから落下点周辺の安全は確保されています。
空撮バルーンは非常に軽量なためダメージは無いと過去の経験から推測できました。
カメラなどは・・・95%の機材が二度と使えないであろうと考えていました。
これは過去のラジコンヘリコプターによる空撮の経験からです。
墜落したカメラです。
キヤノン5D。2008年7月現在も販売されてるいキヤノンのフルサイズデジタル一眼レフカメラです。
この時点で、もっとも軽量なフルサイズデジタル一眼レフであるため、「軽量」と、「画質」の両立を求められる空撮業務には欠かすことの出来ないカメラです。
落としたのはこのカメラが発表された当時に購入した初期ロットとなります。購入時の金額は約35万円と記憶しています。
バルーン空撮以外にも、バーチャルツアーから普通の撮影まで、様々な業務をこなしてきた歴戦の勇者です。
サブ機も、カメラバックに常備しているのですがメイン機であるこちらがトラブルを全く起こさないので使う機会はありませんでした。
このカメラの導入前は1DmkⅡを用いていましたが画質・信頼性ともに5Dが上回っていました。
名器と呼べるデジタル一眼レフです。
夜景撮影には最新のデジタル一眼レフの方が暗部に強いため、このカメラの導入はありません。
しかし・・・昼間の撮影に関してはその画質の優位性から現役に留まりそうです。
本題に戻します。
落下点は水田でした。
ただし・・・水は一部にあるだけでした。
水田のほとんどは湿っている物の固い状態でした。
カメラが落下したのは湿った柔らかい土壌。
この柔らかい田土がカメラを守ってくれたために・・・ご覧のように原型を留めています。
このアルミのアングルの左側にはバルーンつながる10mmのカーボン棒が付いていました。
2つのクランプ=ゆるみ止めネジ+エポキシ接着剤スポット付け
ハーネス=スポーツカイト用ハーネスを瞬間接着剤
もっとも「壊れて欲しい場所」が破損していました。
設計を行う際に、「どこを壊すのか」をイメージしながら機材の軽量化を行います。
この場所が今回のセッティングでは壊すポイントでした。
垂直尾翼の破損により、上空にて激しく姿勢を崩したバルーンはカメラを含む撮影システムを大きく揺らしました。
設計ではこの様な状態も想定しています。風速8m/sでの尾翼などの破損による姿勢の乱れは過去にもテストしています。
しかし、今回はこのテストの時の衝撃を上回っています。
破損時の風速は15m/sを超えている予測できます。(地上にて10m/s)
設計者としてはこの状態で3分耐えたことの方が・・・問題です。
(つまり、まだ軽量化の努力が足りないと・・・)
話は1ヶ月ほど前に戻ります。
カメラマン:「この場所(今回の壊れた場所)からカメラが落ちるのが怖いので、命綱を通しませんか?」
設計者:「その補強により、何グラム重くなるの?」
カメラマン:「ハーネスが2m程度なので、そんなに重くならないかと・・・」
設計者:「キチンと、予定重量増を計算してください。その重さで判断します」
5分後・・・
カメラマン:「重量は15g重くなります。どうしますか?」
設計者:「そんなに重くなるなら強化は認めません」
この様な会話がされていました。
普段はカメラマンがこのバルーンの制作とメンテナンスを行っています。
ディレクターである、私が設計をしています。(1号・2号は私が制作していました)
軽量化と信頼性の向上。運用性が上がると思われる意見は社内で意見を交わし頻繁に機材の更新を行っています。
軽量化と撮影システムについてはロボット開発とラジコン空撮機材開発のノウハウから、私(ディレクター)が中心。
バルーン側はこの頃は制作を行うカメラマンの意見が多く設計志向に取り入れられるようになってきています。
この時に、命綱を通せばカメラの落下は無かったのですが尾翼の破損を生む判断ミスが今回の大きな失敗点です。
重量増は他のパーツにストレスをかけることになるり、総合的なバランスを崩すきっかけにもなり得ます。
失敗は糧として受け止めて、正しい判断は継続します。
今後とも、命綱となるようなパーツは組み込まない予定です。
墜落直後に、シャッターを切ってみました。
田土が付いたレンズ越しに景色が写っています。
上空30mからの落下です。パラシュートなども付いていないため、もの凄いスピードで落下しています。
それにも、関わらずカメラは壊れませんでした。
カメラというのは極めて精密な機械です。当たり所が悪いと50cmで全損ということもあります。
落ちたところは、「絶妙」なポイントでした。
カメラを下にして田んぼに、15cm程度食い込んでいました。
この時に上手に衝撃が吸収されたようです。
カメラとレンズは土でドロドロですが壊れていません。(レンズにはキズがついています)
撮影システムはカーボンで制作されたところは全て壊れています。
このカーボンが壊れることにより衝撃を吸収しています。
この為、カメラを含む他のパーツを守ったと思われます。
落ちる場所が1mでも狂ったら全ての機材がダメでした。
「固すぎる田んぼ」か「水が残っている田んぼ」です。
水が無く、衝撃を吸収出来る柔らかい土
このような条件がでるのは今の時期の水田のほんの少しの場所にしか出現しません。
しかも・・・その、水があるかないかの境界は巾1m程の極めてわずかな範囲です。
偶然が重なって、このようなピンポイントの位置にカメラは落下しました。
撮影が完了し、次の現場に「ロケハン」に移動をしています。
高速道路のPAにて、レンズについた田土を洗い流しました。
水分を取って撮影を行ったのがこの画像です。
業務に投入するにはいくつものテストを行いますがこのままでも実務に投入出来そうな状態です。
レンズ面にはキズが付いているのですが開放付近で使うと全く問題なしです。
つまり・・・夜景撮影にはこのまま投入が可能です。
この日は近々に予定されている空撮現場のロケハン後に、撮影システムを修理するためにラジコン店にてパーツを買い出して事務所に戻りました。
25)2015年現在の夜景バルーン空撮の現状
24)2012年現在の夜景バルーン空撮の現状
23)初夜景テスト キヤノン5D MarkⅡ
22)キヤノン5D MarkⅡ導入
21)開発中間報告
20)空撮専用車両の改造
19)WT-4の落とし穴
18)ニコンWT-4導入
17)夜景撮影テスト5回目
16)軽量化 -213.1g
15)軽量化 -27g
14)ニコンD700導入
13)強風対策=尾翼強化
12)夜景撮影テスト4回目
11)夜景パノラマ空撮カメラ?
10)夜景撮影テスト3回目
9)夜景撮影テスト3回目
8)墜落撮影機材の修理
7)墜落撮影機材のダメージ
6)臨時対風テスト=大失敗
5)空力再設計2回目
4)夜景撮影テスト2回目
3)空力再設計1回目
2)夜景撮影テスト1回目
1)世界初のCubicVR撮影を!