2011年6月17~19日に、第45回全国建具展示会が開催されました。
今年の内閣総理大臣賞は愛知県の川口さん。
受賞したのは左側の息子さん。
初の親子二代受賞者となりました。
この受賞作に関しては別のページにてコメントさせて頂く予定です。
さて、このページの本題は、「写真と組子」
修業時代を振り返りながら、写真と組子に関して考えます。
組子職人の修業の1年目。
1992年頃から、写真の勉強を集中的に行いました。
ネットも発達していなかった事から、書籍・カタログのみが勉強のソースです。
使った資金は2年程度の間に100~150万円。(カメラと書籍とフィルムなど)
その当時の年収に匹敵する金額を写真に投じています。
・構図の勉強
・作品の記録として
この二つの観点から、「組子職人に写真の知識は必須である」と当初から感じていました。
写真は仕事の一部という位置づけでした。
技術という物は早く身につければ「永く使えます」
どうせ覚えるなら短期間で習得した方が「得」と考えて集中的に投資を行っています。
この傾向は昔も今もかわっていません。
それ故に・・・
短期間に、莫大な金額を投じています。
もしも、周囲に適切なアドバイスが出来る方がいれば、投入金額は半分以下に出来たはず。
少なくとも、現在の私がアドバイスをすれば・・・1/3以下にする事も出来ます。
フィルムと現像はどうしても必要。
落とせるのはカメラなどの用具代です。
その後・・・
結局は組子職人で食べれなかった事からWeb屋に転職。
その後、バルーン空撮業へ。
現在はバルーン空撮では第一人者。
車載式という独自のジャンルでは世界で私一人という技術を持つまでになっています。
今の私があるのは組子職人の修業時代に平行して勉強していた写真の知識があったからです。
組子職人を含めて、クリエイティブな職には写真の知識は必須と考えています。
(会社の社員にはデジタル一眼をすべて支給)
小学校2年生になる長女にも、そろそろデジタル一眼を買い与えようと考えているこの頃です。
「感性で写真を撮っている」
この様なコメントを述べるプロのカメラマンを時折見掛けます。
これは明らかに営業用のコメントです。
感性で撮っているカメラマンと、完全な手作りの組子職人は存在しません。
写真を撮るには様々な選択肢を自分の意志で選ばなければなりません。
その一つ一つには全て意味があり選択は結果に結びつきます。
一流と呼べるプロならば、「いつでも」一定の結果を出します。
質を整えるには、「こうすれば一定水準の結果が出る」という計算式を自分の中に持つしかありません。
プロである以上は見切りも必要。
何を抜いて、何を残すのかの計算で、組子も写真もつくられています。
素人は気がついていない。
プロはわかって抜いている。
仮に結果が同じでも、意味は全く異なります。
組子も写真も、計算でしか成り立たない。
写真はこの計算の能力を高めるトレーニングにもなります。
もちろん、構図や、写真感なども組子制作にプラスに働きます。
確かに、初期投資はそれなりに必要。
しかし、組子職人なら、その元は容易に取り返す事が可能です。
ここで、計算が出来ていない例の紹介。
←
真菱にしたかったから?
隙間を誤魔化したかったから?
デザイン?
理由は不明ですがこの結果です。(意味がわかるのは国内で1000人くらい?)
私の周辺の組子職人なら、「あり得ない」レベルのミス。
同業者の厳しい目に触れる事になる展示会には絶対に出せない仕事と思います。
なお、私がつくっているなら・・・
左上から右下に材は、「通します」
この作例のように、右から左への通しでは気持ちが悪くなってきます。(このレベルは10人くらい?)
この、「通す」の意味すらわからないのが○○賞受賞とは・・・
審査員も含めて、レベルが伺い知れます。
組子職人にとっては計算は命。
「数学」は必要ありませんが正確な、「算数」を必要とします。
世の中は受験勉強用の、「数学」が出来ても、実生活で必要な、「算数」が出来ない方か多い。
故に、様々なところで、この弊害が噴出しているのが2011年の夏です。
そして、組子職人の中ですら、「算数」が出来ていない方が多い。
今回の展示会で、「算数」が出来ているレベルの方は10人程度。
20年前のレベルから、大きな進歩はありませんでした。
組子と写真が似通った世界である事に気がついたのはまともに写真が撮影出来るようになってからです。
つまり、写真の勉強を始めた頃は意識をしていませんでした。
ここでは2011年夏という限定で、組子職人が持つべきカメラを考えます。
基本的にはデジタル一眼という前提で述べていきます。
上級者なら、デジタル一眼以外の選択肢で結果を出す事は可能です。
しかし、基本が出来ていない状態で、この世界に入るのは邪道。
一通りデジタル一眼レフの扱いが出来てから、応用に入ってください。
カメラメーカーはどこにするべきか?
基本的にはデジタル一眼レフの老舗なら、どこでも構いません。
老舗にはミノルタを買収したソニーも含みます。
これらなら、必要なレンズは一通り揃っています。
レンズはどうする?
ここでは買ってはいけないレンズから入ります。
入門セットに入っている、安価なズームレンズ。
もらったセットに入っていたなら、必ず処分してください。
このレンズを持っているメリットは何もありません。
組子(全体)を撮るのに求められる性能。
・四隅までシャープに写る
・収差が少ない(ソフトで修正可能)
一般的なカメラの使用用途と、組子の場合は選定基準が全く異なります。
入門レンズが全てに置いてダメだとは言いません。
組子職人の用途には向いていないだけです。
樽収差などと呼ばれる変形を伴うレンズのクセはソフトで取る事が可能です。
しかし、ボケている画像を一定水準に戻すのは不可能です。
つまり、組子に用いるレンズでもっとも必要な性能は、「四隅がシャープに写る事」
これに尽きます。
この組子向きのレンズは・・・
じつは選択肢が非常に少ないというのが実情です。
ズームレンズなどは一部の例外を除いて全滅。
基本的には設計の新しい、口径の大きな単焦点レンズが最適です。
竹(35万円):5Dmk2+TS-E24mmF3.5Ⅱ
梅(20万円):5D(中古)+TS-E24mmF3.5(a(中古)
梅(12万円):5D(中古)+EF24mmF2.8(中古)
キヤノンの広角系ズームレンズは16-35mmf2.8Ⅱ(17万円)が唯一の選択肢。
これ以外のレンズは購入する価値無し。
組子撮影なら、シグマの単焦点レンズの方が価格が安い分は有利。
キヤノンの欠点は写りの良い広角ズームレンズが無い事。
なお、5Dmk2は50万円以下のカメラでトップクラスの写り。
松(90万円):D3X+14-24mmf2.8
竹(35万円):D700+14-24mmf2.8
竹(20~30万円):APS-Cのどれでも+14-24mmf2.8
ニコンには14-24mmf2.8という組子に最適なレンズがあります。
このレンズを使うという前提でシステムは考えます。
予算的に厳しいなら・・・5年前のデジタル一眼でも可。
このレンズはそのボディすら、最新式と比較できる性能に引き上げます。
14mmという超広角はAPS-Cと組み合わせると組子撮影に使いやすいレンズ。
ニコンの欠点はそこそこの価格で写りの良いフルサイズボディが無い事。
以上はゼロから始める場合の例になります。
試算がある(機材を譲ってくれる友人が居る)などの場合はこの限りではありません。