組子細工は通常の木工細工と比較すると、遙かに細かい精度を必要とします。
普通の大工の場合は1mm単位の精度があれば十分です。
隙間なども「目立たなければ良い」というレベルです。
組子細工の場合はこの精度に関する単位が一般の木工細工の職人と桁が違います。
1/100mmを測定できる「マイクロメーター」が必要
古い画像ですいません。(20世紀にフィルムスキャナで制作した画像)
これは制作された組子細工の拡大写真です。
1本が0.65mmの組子(細い木)でつくられています。
ご覧のように「マッチ棒」よりも遙かに細かい物です。
この様な製品を作るには1/100mm単位の精度が必要です。つまり・・マイクロメーターで計るしかありません。
ノギスでは1/10mmの精度なので使い物になりません。(ノギスも仕事では多用します)
職人の修行が始まった当初は、「マイクロメーターを使って計測など・・・何かの冗談なのか・・・」と思っていました。
この考えは1週間程度で覆ることになります。
相手は木(桧)ですので、微妙な湿度と温度、木質で微妙に精度のバラツキが出てきます。
このバラツキが一定量を超えると、後の作業(組み付け)がとてもやりにくくなります。
組子(細い木の事)は板状の原材料から昇降盤(電動の丸鋸)で挽き割られます。
この時点では仕上がり予定寸法の60/100mm程度厚めに製作されています。
(2.10mmに仕上げる場合は2.70mmで挽き割ります)
それを超仕上げ(1回目)にて、20/100mm程度削られて片面の仕上げが完成します。
片面が仕上がった組子は自動カンナで20/100mm程度削られた後に、超仕上げにて15/100mm程度削られます。
これで、1/100mm精度の組子材が完成します。
◆昇降盤とは?
直径30cmくらいの丸鋸が回転して材料を切っていきます。
送りは手動で行います。(自動もあります)
大工から組子屋まで使用する木工加工には一般的な機械です。
組子職人の場合は使用する丸鋸が非常に細い物を用います。
材料である桧は非常に高価な物であるため、ノコギリの刃を細くすることによりロスを最低限にするためです。
◆自動カンナとは?
回転する刃物(カンナの刃)にローラーで組子(材料)を送り込み削っています。
大工が使う物には両面というタイプもありますが組子屋の場合は精度を重視して片面の物を一般的には用います。
削られた表面は微妙ですが荒れています(一般の方のレベルでは十分キレイ)
組子屋が使用する自動カンナは大工などが使用する物と精度レベルが段違いです。
私は0.5mmの薄物を加工するために、自動カンナも改造していました。
◆超仕上げとは?
止まっている刃物(カンナの刃)にローラーで組子(材料)を送り込み削っています。
削られた表面は非常にキレイに仕上がっています。
これ以上の仕上がりは桐タンス職人の手カンナが必要です。(私の知る限り、もっとも上等のカンナ)
この超仕上げはあまりに薄いもの(1mm以下)は削ることができません。
この様な仕事の時には手カンナで仕上げることになります。
何事も継続は重要
私は社員の勉強や仕事内容でも、継続することを重視します。
その考えの根本は職人の修業時代からかわりません。
単調な仕事も、毎日続けているとロスの軽減やセッティング速度の高速化など、伸びしろは見つかる物です。
上記している組子材の加工は非常に単調な作業です。
厚さ3mm・長さ1m程度の組子材を、何千本と機械に通すのが仕事です。
人によっては、「眠くなる」かもしれません。
ちなみに・・・ここで眠くなるような人間は組子職人になれません。
あっという間に指先がノコギリ・カンナの中に入り・・・病院行きです。
このことは後々触れていきます。
本題に入ります。
組子材の加工には1/100mm精度まで追い込みます。
実際には±2/100mm程度のバラツキが出てくるのですが芯の精度は1/100mmまで追い込みます。
何本~何百本を削っていると設定した厚みよりも薄く組子が仕上がってきます。
これは摩擦熱でカンナの刃が延びてくる事に起因します。
朝一番でセッティングを出しても徐々に、その設定は狂ってきます。
カンナの刃が延びると余計に削られるので、その都度機械の微調整を行うことになります。
この摩擦熱は仕事が止まると冷えることから元に戻ります。
中途半端な休憩な場合はこの戻る量も中途半端になります。
経験を積んでくると・・・この中途半端な1/100mmのコントロールを一発で決められるようになります。
この時の微調整の単位が5/1,000mmとなります。
この5/1,000mmという寸法は・・・
髪の毛は1/10mm前後。つまり、100/1,000mm。
髪の毛の1/20の世界です。
ちなみに、2/100mm程度の違いは指先で感じることが出来るようになりますが5/1,000mmはムリでした。
5/1,000mmは、「カンナの削りカスの質感」か、「削るときの音」で感じる事は出来ます。
職人やデザイナーの仕事は、「カン」や「感性」で仕事をしているというイメージがあるかと思います。
実際は計算の上で仕事は進んでいます。ほとんどの場合は・・・
希に「カン」を使うことがあるのですが今回のような部分が「カン」に該当する所です。
上手く言えませんが体が勝手に動きます。